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ASBMR 2025 レポート
根岸 宗一郎(昭和医科大学 歯学研究科 顎顔面口腔外科学講座)

この度、第43回日本骨代謝学会学術集会においてASBMR 2025 Travel Awardをいただき、ASBMR 2025にてPlenary Poster Sessionでの発表の機会をいただきました。世界でご活躍され、顎関節研究にも取り組まれている先生方から貴重なご意見をいただき、大変有意義な時間を過ごすことができました。また、昨年に続き2度目のASBMR参加となりましたが、この1年間で自身の研究の進展と語学スキルの向上を実感し、今後さらに研究活動に邁進していく大きな励みとなりました。

Plenary Poster Session にて撮影

紹介演題 [1]
A Condylar Cartilage-specific Mechanoprotective Role of Runx2 via MMP13 Suppression

キーワード

下顎頭軟骨 Runx2 MMP13

研究グループ

Chiaki Arai, University of Texas, Houston

サマリー

下顎頭軟骨(MCC)は顎関節の重要構成要素であり、咀嚼や顎運動に伴う機械的負荷を常に受けているが、その抵抗機構は未解明である。本研究では、下顎頭軟骨細胞の起源とRunx2の役割に着目した。まず空間トランスクリプトミクス(10X Visium HD)により、Sox9とRunx2を共発現する軟骨細胞層がMCCに存在し、成長因子応答に特徴づけられることを示した。次に、Sox9-CreERT2を用いてRunx2を欠損させたマウス(Sox9-Runx2 cKO)を作製し、P28でタモキシフェンを投与した。3D-µCT解析では、下顎頭に限局した著しい骨吸収が確認され、他の下顎骨や大腿骨には変化はなかった。組織学的にはP35で一過的な細胞増殖と肥大化が見られた後、P56で顕著に減少し、Safranin O陽性基質は消失した。さらにscRNA-seqによりRunx2標的遺伝子を同定したところ、MCCではコラーゲン分解関連遺伝子の上昇と張力維持関連遺伝子の低下が認められ、特にMmp13の著しい発現上昇が確認された。一方、成長板軟骨細胞では同様の変化はなかった。加えて、軟食飼育による咬合力軽減実験では、cKOマウスの下顎頭変性が部分的に改善し、Runx2がMMP13抑制を介してMCCを機械的ストレス誘発性の変性から保護することが明らかとなった。以上より、Runx2は顎関節特異的に軟骨恒常性維持に寄与する新たな力学的防御因子であることが示された。

コメント

本研究は、顎関節特異的にRunx2が果たす新規の力学的防御機構を明らかにしており、特に、成長板軟骨とは異なる転写制御やMMP13抑制を介した軟骨保護作用を示した点は非常に興味深く、顎関節研究に重要な知見を提供する内容でした。下顎頭軟骨特異的な力学環境と分子制御の相互作用を明らかにすることで、私も取り組んでいる顎関節症の病態解明や新規治療戦略の開発に大きく貢献する可能性があると感じました。

紹介演題 [2]
Nicotinamide Adenine Dinucleotide (NAD) Salvage is Essential for Physeal Chondrocyte Survival and Function in Young Adult Mice

キーワード

NADサルベージ経路 Nampt 成長版軟骨細胞

研究グループ

Landon Gatrell, BS, MS, University of Arkansas, USA

サマリー

ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)はエネルギー産生や多様な細胞機能に不可欠であり、ビタミン前駆体からのde novo合成やサルベージ経路によって維持される。発生期のNAD欠乏は軟骨内骨化異常を伴う骨格形成異常を引き起こすことが知られ、血管の乏しい軟骨では特にサルベージ経路の依存性が高いと考えられる。 本研究では、サルベージ経路の律速酵素であるNamptの役割を成体軟骨細胞で解析した。3か月齢マウスにおいて、関節軟骨特異的(Prg4-CreERT2)または関節+成長板軟骨特異的(Agc1-CreERT2)にNamptを欠損させ、DMM手術により外傷性OAモデルを作製した。術後4週では両群とも関節軟骨損失に差はなかったが、NamptΔAgc1ERマウスでは欠損5週以内に大腿遠位・脛骨近位の成長板に顕著な異常が出現した。これにはプロテオグリカン減少、軟骨細胞数低下、全層に及ぶ骨化が含まれ、Col2a1やCol10a1の発現低下および軟骨細胞アポトーシス増加が確認された。一方、NamptΔPrg4ERではこのような変化はみられなかった。以上から、若年成体骨格では成長板軟骨細胞が生存と合成活性維持にNADサルベージ経路を必須とするのに対し、関節軟骨細胞では必須ではないことが示された。

コメント

本研究は、NADサルベージ経路が成長板軟骨細胞の生存と合成活性維持に必須であることを明らかにし、関節軟骨細胞との対比を通じて組織特異的な代謝依存性を示した点で非常に意義深いと感じました。特に、成長板ではNampt欠損が速やかにプロテオグリカン減少やアポトーシスを引き起こす一方、関節軟骨では影響が軽微であったことは、関節症や成長障害の病態機構を考える上で重要な示唆を与えるものでした。

スターバックス1号店前にて記念撮影。右から2番目が筆者、左から2番目が指導教員の矢野先生、後方中央が共著者の岡田先生。