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ASBMR 2025 レポート
若森 幹太(大阪大学大学院 歯学研究科 生化学講座)

2025年9月5日~8日に米国シアトルで開催された ASBMR Annual Meeting に参加しました。今回が初めての海外学会発表ということもあり、普段とは異なる雰囲気に緊張していました。しかし、初日に骨代謝学会主催の食事会に参加し、国内外でご活躍されている先生方と楽しく交流することができ、気持ちを落ち着けて学会に臨むことができました。 私は「Zic1 promotes osteoblast differentiation via epigenetic regulation of the osteoblast-specific enhancer activity」という演題でポスター発表を行いました。発表を通じて貴重なフィードバックをいただけただけでなく、同分野の研究動向に対する理解も深まりました。特に、ミシガン大学の三品教授と30分近くもディスカッションして頂き、海外の著名な研究者にお会いして研究の話ができたことは、大変貴重な経験となりました。ASBMRでのトラベルグラントをサポートしていただいた骨代謝学会に改めて感謝申し上げます。 本学会では基礎研究から臨床研究まで多分野にわたる魅力的な発表が数多くありました。全てをフォローすることはできませんでしたが、その中でも特に私が日頃研究している骨芽細胞や骨に関連する演題についてご紹介いたします。

ASBMR 2025学会会場内にて

紹介演題 [1]
Osteopetrosis-like disorders induced by osteoblast-specific retinoic acid signaling inhibition in mice

キーワード

レチノイン酸シグナル、骨芽細胞、骨硬化症

研究グループ

Siyuan Sun, Yuanqi Liu, Jiping Sun, Bingxin Zan, Yiwen Cui, Anting Jin, Hongyuan Xu, Xiangru Huang, Yanfei Zhu, Yiling Yang, Xin Gao, Tingwei Lu, Xinyu Wang, Jingyi Liu, Li Mei, Lei Shen, Qinggang Dai, Lingyong Jiang

サマリー&コメント

本研究では、骨芽細胞におけるレチノイン酸シグナルの役割を遺伝学的手法で検証し、その阻害が骨代謝に及ぼす影響を解析した。マウスモデルにおいて骨芽細胞特異的にシグナルを抑制すると、骨吸収と骨形成のバランスが大きく崩れ、骨硬化症様の異常が生じた。詳細な解析の結果、骨芽細胞内のシグナル低下が破骨細胞形成を阻害し、骨のリモデリング全体に影響を及ぼすことが判明した。従来、骨芽細胞は骨基質形成が中心的役割と考えられていたが、本研究はそれに加え、骨吸収系細胞とのクロストークを介して骨量制御に重要な調節因子となることを示した点で新しい。骨代謝疾患における骨芽細胞の機能的意義を再評価させる成果であり、将来的には骨硬化症様疾患の病態理解や新規治療標的探索につながると期待される。

紹介演題 [2]
Osteocyte-drived LCN2 drives bone remodeling via wnt pathway during homeostasis

キーワード

LCN2、フェロトーシス、Wntシグナル

研究グループ

Vivek Khanal, Madeline Carroll, Jayden Carter, Ying Zhong, Shashank Chikkamagaluru, Amy Sato, Ryan Allen, Umesh Wankhade, Neha Dole

サマリー&コメント

本研究は、脂質輸送因子Lipocalin-2(LCN2)が骨代謝に果たす役割を解明することを目的とした。解析の結果、LCN2は骨細胞のフェロトーシスを制御し、その過程を通じて骨細胞と骨芽細胞のクロストークを調節することが示された。特にWntシグナル経路を介した影響が明らかとなり、LCN2が骨形成を正に制御するメカニズムが浮き彫りとなった。従来、骨細胞は主に機械的刺激のセンサーとして捉えられていたが、本研究は細胞死様式の制御と分泌因子を介した骨芽細胞活性化を明確に示した点で新規性が高い。さらにフェロトーシスという新しい細胞死様式を骨代謝研究に導入したことも意義深い。これにより骨量維持の理解が深まり、骨粗鬆症など代謝性骨疾患の治療標的としてLCN2を活用できる可能性が示唆される。