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ASBMR 2025 レポート
吉野 舞(広島大学病院口腔先端治療開発学講座[口腔検査センター])

紹介演題 [1]
Activation of NOTCH3 Precludes Corticalization and Skeletal Integrity

キーワード

NOTCH3, 皮質骨化, 骨細胞

研究グループ

Ernesto Canalis (UConn Health, USA)

サマリー&コメント

Notch受容体(1~4)は骨格における細胞分化と機能の主要な制御因子である。その中でNOTCH3は構造的に特異で、平滑筋細胞や骨細胞に特有の発現を示すことから独自の役割が推測されてきた。骨梁が融合し皮質骨を形成する「皮質骨化(corticalization)」は生涯にわたる骨強度に直結する重要なプロセスだが、その分子機構は不明な点が多い。本研究では、活性型NOTCH3細胞内ドメイン(N3ICD)の発現可能な条件付きマウス(R26-N3ICD)を作製し、BGLAP-CreやDmp1-Creマウスとの交配により骨細胞におけるNOTCH3シグナルを活性化した。その結果、皮質骨の形成不全、骨の脆弱化、皮質骨内リモデリングの亢進、皮質骨多孔化が観察され、出生後誘導モデルでも同様の表現型を示した。バルクRNA-seq解析では骨形成に必須のSp7の抑制と、皮質骨化を阻害するグランザイムB(Gzmb)の誘導、さらに骨発生因子Gata4の抑制が確認された。シングルセルRNA-seqでは血管関連遺伝子群の増加が認められ、血管浸潤がNOTCH3依存的骨リモデリングに寄与する可能性が示唆された。以上のことから、発表者らはNOTCH3が皮質骨化制御の鍵因子として、生涯にわたる骨の恒常性維持に不可欠であることを明らかにした。

「皮質骨化」というこれまで解明が不十分であった骨形成過程に、NOTCH3という特異的な分子機構が関与することが明らかになった点が大変興味深かった。また血管因子との関連が示唆された点は、骨リモデリング研究においても新しい視点を提供している。今後この知見が臨床応用へと発展し、未解明な病態の理解や骨質改善の治療に貢献することが期待される。

紹介演題 [2]
Osteoprogenitor-derived Bone Metastases-Associated Fibroblasts (BMAFs) support Breast Cancer Bone Metastases by Remodeling the Extracellular Matrix

キーワード

骨髄微小環境, 癌, 骨転移

研究グループ

Jennifer Zarrer et al.
(Institute of Musculoskeletal Medicine, LMU University Hospital, LMU Munich, Munich, Germany, Germany, Musculoskeletal University Center Munich, LMU University Hospital, LMU Munich, Munich, Germany, Germany)

サマリー&コメント

乳癌骨転移の進展に伴い、骨芽細胞は減少することが知られている。本研究において、発表者らは骨芽細胞の運命を追跡するため、Osx-cre-ERt+;Ai9系統を用いた系譜追跡モデルに4T1乳癌細胞を心臓内注射し、転移モデル骨および対照群骨からtdTomato陽性骨芽細胞を単離し、シングルセルRNA-seqで解析した。その結果、転移モデル骨における骨芽細胞は、腫瘍微小環境や癌関連線維芽細胞(CAF)の増殖関連遺伝子(Cxcl12, Mmps, Pdgfrα/βなど)を発現する独立したクラスターを形成していた。組織学的にも、転移巣内に細長いtdTom+細胞が認められ、骨表面に残存する立方形骨芽細胞と対照的に「骨由来MAF(BMAF)」と定義された。患者転移巣でも同様の所見が確認された。さらに、癌細胞培養上清に曝露したMC3T3-E1細胞や初代骨芽細胞は紡錘形の形態へと変化し、遊走性やコラーゲンリモデリング能が増大、かつ骨芽細胞マーカーの発現が低下しBMAF関連遺伝子が誘導された。機序としてRNA-seqによりIL17A経路の活性化が同定され、IL17A刺激でBMAF様表現型が再現され、阻害により形態や機能が回復、さらにin vivoで骨転移も減少した。機能的には、BMAFはCol1a1やフィブロネクチンを沈着し、MMP13を介してECMをリモデリング、癌細胞増殖を促進した。MMP13阻害はこの作用を抑制した。以上のことから、発表者らは骨芽細胞がIL17Aシグナルを介してBMAFへと転換し、転移骨ニッチで腫瘍進展を助長することを示した。

これまで骨芽細胞がCAF様表現型を獲得する可能性は示唆されていたが、発表者らは本研究において系譜追跡を用いてその現象を実証し、分子機序まで明らかにした点で革新的である。特にIL17Aシグナルを介した転換機構の解明や、MMP13阻害による腫瘍抑制効果は、将来的に骨転移制御の新たな治療戦略につながる可能性があると考えられる。

ハンマーで叩いて身と殻を剥がしてアラスカガニを頂きました。(左からAugusta Univ.の吉井先生、京都iPS細胞研究所の本池先生、指導教官の加治屋先生、吉野、京都iPS細胞研究所の池谷先生)

Travel Award受賞者交流会に参加させて頂きました。普段なかなかお話できないような重鎮の先生方や、他の受賞者の先生方とも交流できる、大変貴重でありがたい機会となりました。(写真はその帰り道に撮影したもの。)