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ASBMR 2025 レポート
星野 良朋(東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科)

ポスター発表では多くの先生方に興味をもっていただき、大変嬉しく感じました。

紹介演題 [1]
PHEX Autoantibodies in Idiopathic FGF23-mediated Hypophosphatemia

キーワード

PHEX、自己抗体、FGF23関連低リン血症

研究グループ

Iris Hartley, Peter Burbelo, Carlos R. Ferreira, et al.
National Institutes of Health, USA

サマリー

X染色体連鎖性くる病・骨軟化症(XLH)はPHEX遺伝子変異によるFGF23関連低リン血症であり、先天性FGF23関連低リン血症の中で最も頻度が高い。一方、後天性FGF23関連低リン血症で最も頻度が高いものは腫瘍性骨軟化症(TIO)であるが、後天性の症例の中には原因腫瘍が同定できないもの(本演題では「特発性」と記載)も多く存在する。近年、特発性FGF23関連低リン血症において抗PHEX自己抗体が同定され、疾患の新たな自己免疫的機序が示唆された(Hoshino et al, NEJM 2025)。本研究では、腫瘍を認めない特発性FGF23関連低リン血症21例における抗PHEX自己抗体の有無を検討した。

抗体測定はluciferase immunoprecipitation systems (LIPS)を用い、PHEXに加えDMP1, ENPP1, SLC34A1, SLC34A2に対する自己抗体を評価した。その結果、21例中1例(4.8%)にのみ抗PHEX自己抗体が検出され、他の分子に対する抗体は陰性であった。

抗PHEX自己抗体陽性例は49歳女性で、inflammatory arthritis(炎症性関節炎)や橋本病を合併し、20代から日常生活に支障を来す筋力低下を繰り返していた。血清リン値は1.7~3.1 mg/dLと低値で、iFGF23は50-70 pg/mL程度であった。骨密度は脊椎で高値を示し、頭蓋骨のびまん性肥厚も認めたが、遺伝子検査で既知の病的変異は認められなかった。

本研究は、PHEX自己抗体陽性症例を新たに同定し、特発性FGF23関連低リン血症の自己免疫的病態を支持する結果であった。特にiFGF23が軽度高値にとどまる症例(筆者注:リン濃度や骨型ALPの変化が少ない症例のほうがより正確)では、この病態を考慮することで不要な腫瘍検索を回避できる可能性があり、抗PHEX自己抗体測定は臨床上有用な診断手段となり得る。

コメント

我々が報告した5症例(Hoshino et al, NEJM 2025)以外では、本症例が初めての自己免疫性骨軟化症の報告例である。我々の5症例のうち1例でも複数の自己免疫疾患を合併していたが、本症例においても自己免疫疾患の合併を認めており、興味深い。一方で、DOTATOC-PET/CTなど感度の高い検査を施行した症例を含んでいるにもかかわらず、21例中わずか1例でしか抗PHEX自己抗体が検出されなかった点は意外であった。その理由としては、本報告で使用されたRlucを用いたLIPSが、我々の採用したNanoLucを用いた方法に比べ感度で劣る可能性や、LIPSで検出できずフローサイトメトリーでのみ検出可能な膜タンパク質の立体構造特異的な抗体が存在する可能性などが考えられる。

紹介演題 [2]
ENPP1 regulates FGF23-mediated phosphate metabolism via mitochondrial homeostasis in autosomal recessive hypophosphatemic rickets type 2

キーワード

ENPP1、ARHR2、ミトコンドリア恒常性

研究グループ

Chang Liu, Weibo Xia, et al.
The Second Affiliated Hospital, Zhejiang University School of Medicine, Hangzhou, China
Peking Union Medical College Hospital, China

サマリー

常染色体劣性低リン血症性くる病2型(ARHR2)は、FGF23関連低リン血症や異所性石灰化を特徴とする稀な疾患であり、その原因はENPP1の機能喪失型変異にある。ENPP1は細胞外ATPを分解し、AMPとピロリン酸(PPi)を産生する酵素である。

ENPP1欠損は細胞外ATP分解を阻害してATP蓄積を引き起こすが、本研究のin vitroでの検討により、過剰な細胞外ATPはプリン作動性P2受容体を介してミトコンドリア内カルシウム過負荷と過剰な活性酸素種(ROS)産生を誘導し、その結果、FGF23の転写およびO-グリコシル化が促進され、FGF23過剰産生につながることが示唆された。

さらに、本研究では骨細胞特異的ENPP1欠損マウス(ENPP1 cKOマウス)を作製した。同マウスは血清FGF23上昇、低リン血症、尿中リン排泄増加を呈した。加えて、ENPP1 cKOマウスにRu360やFCCPを投与しミトコンドリアCa²⁺取り込みを阻害すると、FGF23の過剰産生が改善された。

以上より、ENPP1欠損によるARHR2の病態機構は、「ENPP1欠損→細胞外ATP蓄積→P2受容体活性化→ミトコンドリアCa²⁺過負荷→FGF23産生増加」という新たなシグナル軸に基づく可能性が示唆された。

コメント

ENPP1遺伝子のホモ接合体変異あるいは複合ヘテロ接合体変異によりENPP1の機能が喪失するとFGF23関連低リン血症が引き起こされるが、そのメカニズムは解明されていない。その中で本研究は、ENPP1欠損が細胞外ATP分解障害を介してATP蓄積をもたらし、P2受容体活性化からミトコンドリアカルシウム過負荷およびROS産生亢進を惹起し、結果としてFGF23の過剰産生へと至る新たな病態経路の可能性を示し、ミトコンドリア恒常性の重要性が示唆された。一方で、細胞外ATPの蓄積とFGF23発現制御との直接的な因果関係については、依然として議論の余地があると考えられる。細胞外ATPは多様な生理的状況で変動し得る分子であるため、FGF23というきわめて精緻なリン感知・調節機構にどのように特異的に影響し得るのか、さらなる検討が望まれる。

Young Investigator Awardを受賞することができました。ご指導賜りました先生方に心より感謝申し上げます。