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ANZBMS 2026 レポート
中野 綾(十和田市立中央病院 整形外科)

ANZBMS 2026に参加して

第36回オーストラリア・ニュージーランド骨代謝学会(ANZBMS 2026)は、2026年9月6日から9日まで、ニュージーランド・オークランドで開催された。基礎研究、臨床研究、アライドヘルスが一つの会場に同居する構成で、参加規模は日本骨粗鬆症学会より小さいものの、その分だけ演者と聴衆の距離が近く、ポスター前での議論が途切れない学会だった。

臨床演題では、ロモソズマブとデノスマブ中止後の逐次療法をめぐる報告が印象に残った。Logan Hospitalの注射部位反応の症例集積は、薬液を投与前に室温へ戻す、注射部位をローテーションするといった単純な工夫だけで12回の全コースを完遂できたことを示しており、リアルワールドにおける治療継続性を考えるうえで示唆に富んでいた。Royal North Shore Hospitalの報告では、非定型大腿骨骨折後にテリパラチドへ移行した症例で腰椎骨密度は維持される一方、大腿骨頸部とtotal hipは低下していた。骨密度反応の部位差は我々のコホートでも一貫して認められる所見であり、部位別に評価することの重要性を改めて確認した。Bone Compass AustraliaのREMS大規模解析は、年齢とBMIを揃えた層の内部でもTスコアが正常から骨粗鬆症までまたぐことを示し、集団統計と個々の患者の間にある隔たりを突きつけるものだった。

私自身は9月8日のポスターセッションで、むつ総合病院と十和田市立中央病院の409例を対象に、ロモソズマブがCKDステージを問わず腎機能低下を加速させず、低カルシウム血症は進行CKD症例に限局することを報告した。腎機能低下例への投与を躊躇する場面は日本でも日常的であり、各国の実臨床データを持ち寄る意義を実感した。

ポスターセッション演題
Romosozumab does not accelerate renal decline across CKD stages with hypocalcemia confined to advanced CKD: a multicentre real-world study of 409 Japanese patients

Poster #206(Poster Session 1) 2026年9月8日(火)11:45–12:45 L5 Foyer 1 & 2

学会期間中の会食(オークランド市内)

紹介演題 [1]
Case series: Local skin reaction to romosozumab with subsequent completion of treatment course

キーワード

ロモソズマブ,リアルワールドデータ,骨密度

研究グループ

Quynh Truong、Kathryn Berkman、Simon Ryder(Logan Hospital, Meadowbrook, QLD, Australia)

サマリー

ロモソズマブの注射部位反応(ISR)を来した2症例の報告。ISRの頻度はFRAMEで5.2%(プラセボ2.9%)、ARCHで4.4%(アレンドロネート2.6%)と報告されているが、実臨床での管理指針は確立していない。本症例では、投与前に薬液を冷蔵庫から出して30分以上室温に戻すこと、注射部位を腹部から大腿・上肢へローテーションすること、抗ヒスタミン薬や消炎鎮痛薬を併用することにより、いずれも12回の全治療コースを完遂できた。豪州TGAの有害事象データベースでロモソズマブ単独が関与したISR報告は1例のみであり、実臨床では過少報告されている可能性が高いと結論している。

コメント

副作用そのものよりも、それが治療中断につながるか否かが実臨床の分かれ目である。我々も12回投与の完遂率を検討課題としているが、中断理由の内訳まで踏み込んだ報告は少ない。室温復温と部位ローテーションという、明日から外来で実行できる対策が提示された点に価値があった。企業からISRの具体的な管理指針が得られなかったという率直な記載も印象的で、こうした実務的な知見こそ症例報告として共有される意義があると感じた。。

紹介演題 [2]
Vertebral Fracture Risk and Bone Mineral Density Outcomes Following Sequential Teriparatide Therapy After Denosumab Cessation in Patients with Atypical Femur Fractures: A Retrospective Cohort Study

キーワード

ロモソズマブ,リアルワールドデータ,骨密度

研究グループ

A Wijewardene、M Gild、R Clifton-Bligh(Royal North Shore Hospital/University of Sydney, NSW, Australia)

サマリー

非定型大腿骨骨折(AFF)を契機にデノスマブを中止し、直後にテリパラチドへ移行した12例(女性11例、AFF発症時年齢中央値75歳)の後ろ向きコホート。平均追跡3.3年で、腰椎骨密度の変化率は−0.64%とほぼ維持された一方、大腿骨頸部は−5.52%、total hipは−4.19%と低下した。新規椎体骨折および対側AFFの発生はいずれもなかった。デノスマブ中止後のテリパラチド逐次投与は、リバウンド椎体骨折の予防と腰椎骨密度の維持には有効だが、股関節部の骨量減少は防げないと結論している。

コメント

逐次療法における骨密度反応の部位差を、AFFという難しい臨床状況で示した点が興味深い。我々のロモソズマブコホートでも腰椎と股関節の反応解離は一貫した所見であり、薬剤や投与順序が変わっても部位差が残ることは、椎体だけを見て治療効果を判断してはならないという共通の教訓を示している。n=12と小規模ながら、抗吸収薬を使いにくい状況での現実的な選択肢を示した実践的な報告だった。

紹介演題 [3]
REMS-derived BMD and T-score variance across Age & BMI segments in Australia — real-world evidence from >1,200 women

キーワード

ロモソズマブ,リアルワールドデータ,骨密度

研究グループ

Tognarini DP、Youssef SR、McCloud P、Button P、Ryder J、Moore S、Hennig P、Samanipoor S、Birch N(Bone Compass Australia/McCloud Consulting Group/Osteoscan UK Ltd)

サマリー

2023年2月から2025年12月までにREMS(超音波によるBMD測定法)を受けた女性1,284名(平均年齢60.6歳、20〜94歳)を対象とし、大腿骨頸部3,036スキャン、腰椎2,521スキャンを解析。5歳刻みの年齢区分と3段階のBMI区分で層別しても、区分内の骨密度の幅は腰椎で平均0.317 g/cm²、大腿骨頸部で0.223 g/cm²に及んだ。25スキャン以上を含む18区分でTスコアの幅が1.5 SDを超え、腰椎10区分・大腿骨頸部5区分では「正常」から「骨粗鬆症」までWHO診断基準をまたいでいた。年齢とBMIだけでは説明できない個人差が存在すると結論している。

コメント

年齢とBMIを揃えても診断カテゴリーをまたぐほどの個人差が残るという結果は、疫学的な平均値と目の前の一人の患者の間にある隔たりを可視化している。我々もBMIと骨密度反応の関連を検討してきたが、説明変数を積み上げても残る個体差をどう扱うかは今後の課題である。放射線被曝がなく可搬性の高いREMSは、DXAを持たない診療所での骨粗鬆症診療にも関わる技術であり、開業を控えた立場としても注目したい。