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IFMRS 2025 レポート
柳原 裕太(愛媛大学 プロテオサイエンスセンター 病態生理解析部門)

紹介演題 [1]
Beyond Bioenergetics: Multifaceted Roles of Mitochondria in Bone and Muscle

キーワード

Mitochondria, Bone, Muscle

研究グループ

Yun-Sil Lee
Department of Molecular Genetics, School of Dentistry and Dental Research Institute, Seoul National University, Seoul, Republic of Korea

サマリー

ミトコンドリアは従来のエネルギー産生器官にとどまらず、組織発達・再生を制御する多面的因子として注目されている。本研究では、骨と筋肉の双方で、その非典型的な役割が重要であることを明らかにしていた。骨では、成熟した骨芽細胞がミトコンドリアおよびミトコンドリア由来小胞を細胞外へ放出し、それが骨前駆細胞の分化と成熟を促進することを示していた。骨芽細胞中のミトコンドリア分裂の促進は骨形成を高め、逆にミトコンドリアの融合促進は骨形成を抑制していたことから、分泌型ミトコンドリアが骨形成促進因子として働くことが示唆されていた。一方、骨格筋ではミトコンドリア抗酸化酵素 (PRDX3/5) が筋形成と恒常性維持に重要な役割を担っているであることが示されていた。PRDX5欠損は、ミトコンドリア機能障害と輸送不全を招き、核配置異常や筋再生障害を引き起こし、さらにPRDX3/5の二重欠損は筋量および筋力の早期低下と老化促進をもたらしていた。これらの結果は、ミトコンドリアが骨形成および筋老化の調節因子として機能することを示唆している。

コメント

本研究内容を拝聴し、ミトコンドリアがエネルギー産生という典型的な役割を超えて、骨や筋肉における新たな治療標的となる可能性があると感じました。

紹介演題 [2]
Skeletal stem/progenitor cells (SSPCs) contribute to the anabolic actions of intermittent PTH through PDGF receptor signaling

キーワード

Skeletal stem/progenitor cells (SSPCs), Intermittent PTH, PDGFR

研究グループ

Johanna Besold1,2,3, Chloë Goossens1, Ruben Cardoen1, Elena Nefyodova1, Natalie Sims2, 3, Christa Maes1

1. Laboratory of Skeletal Cell Biology and Physiology (SCEBP), Skeletal Biology and Engineering Research Center (SBE), Department of Development and Regeneration, KU Leuven, Leuven, Belgium
2. St. Vincent's Institute of Medical Research, Fitzroy, Victoria, Australia
3. Department of Medicine at St. Vincent’s Hospital, The University of Melbourne, Melbourne, Australia

サマリー

iPTH投与(80µg/kg、1日10回投与)は、骨中のPDGFリガンドおよび受容体の遺伝子発現を増加させており、PDGF-PDGFR経路の関与を裏付けていた。iPTH投与3日後には、PDGFR α/βを発現しているSkeletal stem/progenitor cells(SSPC)数が減少し、10日後には分化後の前駆細胞へとシフトしていることが示されていた。PDGFRβ陽性細胞をtdTomatoで、骨芽細胞をGFPで標識し、細胞系譜解析を実施した結果、PDGFRβ陽性のSSPCはiPTH投与10日後から活発に増殖し、投与4週間後にはPDGFRβの子孫細胞の一部はGFP陽性の骨芽細胞へと分化していた。これらの結果から、iPTHはPDGFR陽性SSPCの増殖および骨芽細胞への分化を誘導することが示唆されていた。PDGFRシグナルがiPTH誘導性の骨形成に必要かどうかを検証するため、Prrx1-Creマウスを用いてPDGFRを四肢の間葉系幹細胞で欠損させたマウスを作製し、解析を実施していた。このマウスでは、本来確認されるべき、iPTH投与後の骨芽細胞数や石灰化の増加が阻害されていた。以上の結果から、PDGFRシグナル伝達がiPTHの骨形成作用を媒介していることを示唆していた。

コメント

本研究から、PDGF-PDGFR経路がiPTHの分子標的であることが明らかになり、その調節が骨折等の治療へ活用できる可能性があると感じました。今後、iPTHの詳細な作用機序の解明を期待しています。