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IFMRS 2025 レポート
前村 美希(昭和医科大学 大学院歯学研究科 顎顔面口腔外科)

この度、IFMRS 2025 Travel Awardを受賞し、ANZBMS 2025に続いて本学会に参加いたしました。会期中には体調を崩し、一時は声が出なくなる場面もありましたが、それも含めて印象深い経験となりました。将来の骨代謝研究を担う研究者の方々と近い距離で議論することができ、大変刺激的で有意義な時間を過ごすことができました。今後取り組むべき課題は多く残されていますが、本学会で得た交流と学びを糧に、研究に一層真摯に向き合っていきたいと感じています。

ポスターセッション直前に声が出なくなってしまう状況での発表となりましたが、周囲の皆さまの温かいご配慮とご支援に助けられ、無事に乗り越えることができました。

紹介演題 [1]
Circadian glucocorticoid rhythm timing and amplitude regulate bone remodeling

キーワード

概日リズム、グルコルチコイド、Bmal1

研究グループ

Annelies E Smit, Leiden University Medical Center, Leiden, The Netherlands

サマリー

本研究では、グルココルチコイドの概日リズムの振幅およびタイミングが骨の健康に及ぼす影響を検討した。C57BL/6J系雌マウスに7.5%コルチコステロン(CORT)ペレットを移植し、1日の総CORT量を増加させることなく、生理的な概日CORTリズムを平坦化した。次に、CORTペレット移植マウスに対し、生理的CORT下落時刻に相当する午後にグルココルチコイド受容体(GR)拮抗薬RU486を投与、あるいは生理的に上昇する時刻に相当する午前にCORTを追加投与し、GCの下落および上昇の役割を1週間評価した。さらに、下落するタイミングの重要性を検討するため、CORTペレット移植マウスに7週間、毎日午前または午後にRU486を投与した。

CORTリズムの平坦化により、血漿中の骨形成マーカーP1NPは生食投与群と比較して38%低下した。一方、RU486投与によりGCの下落を再現するとP1NPは正常化したが、GCの上昇を再現しても改善は認められなかった。またCORTペレット移植マウスにRU486投与を7週間継続すると、P1NPはRU486投与時刻に一致して上昇を示し、投与時刻には依存しなかった。これは、GRシグナルの低下が骨形成を誘導することを示す。さらに、CORTペレット移植により概日調節遺伝子Bmal1の日内振幅は消失したが、RU486投与により投与時刻にかかわらず振幅は回復した。また、CORTリズム平坦化により皮質骨は菲薄化し海綿骨量が減少した。一方で、RU486投与により皮質骨は菲薄化しなかったが、海綿骨では午前投与のみでその骨量が維持された。以上より、GRシグナルの休止時間を形成することは骨恒常性維持に重要であり、GC治療においても、作用の休止時間を確保することで骨粗鬆症の予防が期待される。

コメント

本発表は、グルココルチコイドの概日リズムにおける振幅やタイミングが骨リモデリングに与える影響を実験的に明確に示した点が印象的であった。特に、作用が持続的にかかる状態では骨形成が抑制され、一定の休止時間を設けることが骨代謝の維持に重要であるという視点は新鮮であり、臨床におけるステロイド治療の投与設計を考える上でも示唆に富む内容であった。

紹介演題 [2]
Diurnal glucocorticoid rhythms play a critical role in the development of osteoarthritis during chronic disruption of circadian rhythms

キーワード

Bmal1、グルココルチコイド、変形性関節症

研究グループ

Eugenie Macfarlane, The University of Sydney, Concord, Australia

サマリー

概日リズム(CR)の慢性的破綻は変形性関節症(OA)のリスクを高めることが知られているが、その機序は十分に解明されていない。内因性グルココルチコイド(GC)は日内リズムに従って分泌され、末梢組織の細胞時計を同調させる因子である。本研究では、CR破綻下におけるOA発症に、軟骨細胞のGC受容体(GR)シグナルが関与するかを検討した。

8週齢雄性の軟骨細胞特異的GR欠損マウスおよび同腹のWTマウスを用い、22週間にわたり明暗サイクルを週単位で12時間反転させる条件下または通常明暗周期下で飼育した。明暗サイクルを反転させる条件下で飼育した場合、WTマウスおよびGRKOマウスのいずれにおいても CRリズムが破綻することで、血中コルチコステロンの概日リズムが消失し、生理的覚醒ピークが失われた。一方、軟骨組織における主要時計遺伝子Bmal1のリズム発現は、WTでは消失したが、GRKOでは維持されていた。これは、不規則なGCシグナルを遮断することで、軟骨内の自律的な体内時計は保たれることを示している。また組織学的解析では、CR破綻によりWTマウスでは膝関節軟骨変性が進行したが、GRKOで進行は認めなかった。さらにDMMモデルにおいても、CR破綻によりWTでは、OAの初期段階における軟骨変性、軟骨下骨硬化、滑膜への肥満細胞浸潤が促進されたが、GRKOではこれらが進行しなかった。以上より、慢性的なCR破綻がOAへと進展する過程には、軟骨細胞におけるGC–GRシグナルが中心的役割を果たすことが示された。

コメント

本発表は、概日リズム破綻と変形性関節症との関係について、グルココルチコイドシグナル伝達の重要性を、モデル実験で丁寧に検証した点が非常に印象的であり、病態形成の理解を一段深める完成度の高い研究であった。全身性のリズム異常が局所の軟骨病変へとつながる過程を明確に提示しており、今後の研究展開や治療戦略を考える上でも重要な示唆を与える発表であった。

初日のセッションで同じグループとなったAnneさんは、その後のポスターセッションでも足を運んでくださり、熱心に耳を傾けてくださいました。