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IFMRS 2025 レポート
池戸 葵(北海道大学大学院歯学研究院 口腔分子生化学教室)

紹介演題 [1]
Components of osteoporosis and long-term cardiovascular disease outcomes

キーワード

骨粗鬆症、心血管疾患、Tスコア

研究グループ

Cassandra Smith1, 2, Marc Sim1, 2, Jack Dalla Via3, Abadi K Gebre1, Kun Zhu2, Wai H Lim1, Richard L Prince2, Gemma Figtree4, 5, Andrew JS Coats6, John T Schousboe7, 8, Joshua R Lewis1, 2, William D Leslie9

1. School of Medical and Health Sciences, Edith Cowan University, Perth, Western Australia, Australia
2. Medical School, University of Western Australia, Perth, WA, Australia
3. Institute for Physical Activity and Nutrition (IPAN), Deakin University, Melbourne, VIC, Australia
4. Northern Clinical School, Kolling Institute of Medical Research, University of Sydney, Sydney, NSW, Aus
5. Department of Cardiology, Royal North Shore Hospital, Sydney, New South Wales, Australia
6. Heart Research Institute, Sydney Australia
7. Park Nicollet Clinic and HealthPartners Institute, HealthPartners, Minneapolis, USA
8. Division of Health Policy and Management, University of Minnesota, Minneapolis, USA
9. Departments of Medicine and Radiology, University of Manitoba, Winnipeg, Canada

サマリー

骨粗鬆症は心血管疾患(CVD)リスクの上昇と関連する可能性が指摘されているが、骨粗鬆症の構成要素である T スコアや骨折といった因子が、長期的なCVD転帰にどの程度関与するかは明確ではない。本研究グループでは、高齢女性コホートにおける骨粗鬆症とCVD死亡リスクの関連を検討し、さらに日常診療に基づく大規模データベースを用いて検証を行った。

骨密度(BMD)は二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)で評価し、Tスコア ≤ -2.5を骨粗鬆症、-2.5~-1.0 を骨減少と定義した。心血管死や主要心血管イベント(MACE)などのアウトカムは、医療データベースとのリンクにより取得した。解析は主要なCVDリスク因子で調整された。

コホート1(1,117名、平均75.0歳)では、骨減少が59.7%、骨粗鬆症が27.7%に認められ、15年間で166名(14.9%)がCVDにより死亡した。正常BMDと比べ、いずれかの部位で骨粗鬆症を有する場合、心血管死亡リスクが92%上昇した。コホート2(80,483名、平均66.5歳、94.7%女性)では、骨減少が50.4%、骨粗鬆症が25.4%であり、8.5年間に 20,047 件(24.9%)のMACEが発生した。正常BMDと比較して、骨粗鬆症は17〜35%のリスク上昇と関連し、急性心筋梗塞、虚血性脳血管障害、総死亡率などのアウトカムでも一貫したリスク増加が認められた。部位別解析では、特に股関節部位で最も強い関連が示された。

コメント

Tスコアによる低骨密度評価や既存骨折の存在は、長期的なCVDイベントや死亡の増加と関連していた。これらの結果は、骨粗鬆症が心血管リスクを把握する新たな指標となり得る可能性を示している。今後、両者の関連が因果的かどうか、またその背景にある生物学的メカニズムの解明が期待される。近年、骨粗鬆症が様々な疾患の発症に関わる可能性が示されており、骨組織を介した多臓器の制御機構について興味が深まる報告であった。

紹介演題 [2]
Osteoclast recycling as a potential mechanism driving rebound bone loss following denosumab withdrawal

キーワード

Osteomorph、破骨細胞、デノスマブ

研究グループ

Dougall M Norris1, Shelley Ma2, Olivia Mayers1, Millie Jiang1, Aaron Schindeler3, Albert Kim2, Christian M Girgis1, Michelle M McDonald1

1. Faculty of Medicine and Health, The University of Sydney, Sydney
2. Garvan Institute of Medical Research, Sydney
3. Faculty of Engineering, The University of Sydney, Sydney

サマリー

デノスマブ(Dmab)の中止後には、破骨細胞形成と骨吸収が急速に亢進し、多発椎体骨折のリスクが上昇することが知られている。この「リバウンド現象」の背景として、RANKL の急増や破骨細胞前駆細胞の蓄積が指摘されているが、その詳細な細胞動態は十分に明らかにされていない。本研究グループは、RANKL のデコイ受容体である osteoprotegerin:Fc(OPG:Fc)を用いて、破骨細胞抑制後に生じる細胞動態の変化、とくに破骨細胞分裂由来の細胞である osteomorph の関与を検討した。

マウス由来の初代培養破骨細胞に OPG:Fc(250 ng/mL)を30時間処理したところ、総破骨細胞数は約70%減少した一方で、アポトーシスを示す破骨細胞はむしろ減少していた。また、総細胞数は約2倍に増加しており、破骨細胞が細胞死するのではなく、分裂(fission)することで小型の細胞群が増加している可能性が示唆された。さらに、LysM-TdTomato マウスから得た多核破骨細胞を用いたライブセルイメージングでは、OPG:Fc 処理群で破骨細胞の分裂頻度が有意に増加しており、osteomorph の形成が促進されることが確認された。

これらの結果から、抗 RANKL 治療中には破骨細胞前駆細胞のみならず、破骨細胞由来の osteomorph が蓄積することが明らかとなった。治療中止後にこれらの osteomorph が再融合して破骨細胞を急速に再形成することが、リバウンド現象の一因となる可能性が示唆される。

コメント

本研究は、デノスマブ中止後の骨吸収過剰の新たなメカニズムとして osteomorph の寄与を提示するものであり、今後の治療応用に向けた研究の発展が期待される。

北海道からケアンズに向かいましたが、気候が正反対で不思議な気持ちになりました。日本では見られない動植物が沢山生息していて、特に鳥の種類が多かったことが印象的でした。Workshopの雰囲気もとても良く、楽しい時間を過ごすことができました。