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IFMRS 2025 レポート
井内 陽介(長崎大学 医歯薬学総合研究科 歯科矯正学)

今回はポスター発表の機会を頂き、貴重な経験となりました。

紹介演題 [1]
Diurnal glucocorticoid rhythms play a critical role in the development of osteoarthritis during chronic disruption of circadian rhythms

キーワード

概日リズム、グルココルチコイドシグナル、変形性関節症

研究グループ

Eugenie Macfarlane et al.
The University of Sydney, Concord, NSW, Australia

サマリー

交代勤務による概日リズム(CR)の慢性的な乱れは変形性関節症(OA)の発症リスクが高めるが、その根本的なメカニズムは不明である。内因性グルココルチコイド分泌は日内リズムに従い、体内時計を同期させることでCRを調節する。本研究では、軟骨細胞におけるグルココルチコイドシグナル伝達が、変形性関節症におけるCR不調の影響を媒介するかどうかを検討した。

8週齢の野生型マウスと軟骨特異的GC受容体ノックアウト(GRKO)マウスを22週間にわたり、毎週12時間の明暗サイクルをずらす“時差ボケモデル”に曝露した。CR阻害群では、睡眠・活動パターンが大きく乱れたほか、本来は覚醒時に上昇するコルチコステロンのピークが消失し、GC分泌の昼夜リズム自体が崩れていた。また、軟骨での時計遺伝子Bmal1のリズムも野生型では失われていたが、GRKOマウスでは維持されており軟骨細胞のGCシグナルが時計遺伝子の乱れに直接関わることが示唆された。

組織学的には、CR阻害は野生型マウスの膝関節で軟骨損傷を進行させたが、GRKOマウスでは引き起こさなかった。内側半月板を不安定化して OA を人工的に進める DMM モデルでも、CR の乱れは野生型マウスで早期の OA 変化(軟骨の傷み、軟骨下骨の硬化、滑膜の炎症)をさらに悪化させた。一方、GRKOではその多くが抑制されていた。

コメント

本研究は慢性的な生活リズムの乱れによるOAの悪化には、軟骨細胞のGCシグナルが中心的に関わることを報告している。CRそのものが軟骨の時計遺伝子や内分泌応答に影響し、それがOA進行と直結するという点は非常に興味深い。関節領域において力学因子だけでなく、時間生物学的視点からOAを理解する重要性を示す演題である。

紹介演題 [2]
Coordinated 3D structural and compositional changes between articular and calcified cartilage

キーワード

関節軟骨、石灰化軟骨、変形症関節症

研究グループ

Pholpat Durongbhan et al.
Department of Biomedical Engineering, The University of Melbourne, Parkville, Victoria, Australia

サマリー

石灰化軟骨は、関節軟骨と軟骨下骨の間に位置する移行的な石灰化層であり、関節軟骨を下層の軟骨下構造へと固定し、関節全体へ力学的負荷を伝えるうえで重要な役割を担っている。しかし、変形性関節症(OA)の進行に伴い、これら2つの軟骨組織がどのように相互にリモデリングし、関係性が変化していくのかについて十分に解明されていない。本研究では、造影シンクロトロン放射マイクロCT(SR-microCT)を用いて関節軟骨と石灰化軟骨を三次元的に可視化し、構造および組成の変化を同時に評価することで、OAに伴う組織間の連動性の変化を明らかにすることを目的とした。

解析には、OA自然発症モデルである雄の STR/Ort マウス(n=16)と CBA/1 マウス(n=16)の脛骨を用いた。サンプルは陰イオン性造影剤中でインキュベートした後、SR-microCT により 3 µm の高解像度で撮像し、関節軟骨および石灰化軟骨を多段階閾値法でセグメンテーションした。

その結果、外側コンパートメントでは両組織の構造・組成指標が強い相関を示し、関節軟骨と石灰化軟骨が協調的に変化していることが確認された。一方、内側では相関が弱く、組織間の連動性が低下していた。この非対称的なパターンは、内側により大きな損傷が生じるとする既報の共焦点顕微鏡解析の知見とも一致しており、OAにおける局所的な組織間ネットワークの阻害を反映している可能性が高い。

コメント

本研究は、関節軟骨と石灰化軟骨の協調的リモデリングを三次元で同時に定量した初めての試みであり、境界組織の変化を SR-microCT によって詳細に追跡できることを示した。これらの組織間連動性の評価は、OA の早期診断や進行度のモニタリング指標として応用できる可能性を示しており、今後の関節疾患研究に新たな視点を提供するものである。

キュランダにてコアラと記念撮影しました。