骨ルポ
ANZBMS 2025 レポート
澤村 健太(名古屋大学 医学部 整形外科学講座)
発表会場
紹介演題 [1]
Decoupling calcified cartilage from cortical bone reveals distinct mineralisation patterns in an osteoarthritis mouse model
キーワード
変形性関節症、マイクロCT、関節軟骨
研究グループ
Pholpat Durongbhan, Han Liu, Ryan J. Choo, Colin Firminger, Thomas Steiner, Luc Nimeskern, Zixuan C. Zhao, Ralph Müller, Kathryn S. Stok
Department of Biomedical Engineering, The University of Melbourne, Parkville, Victoria, Australia
サマリー
本研究は、変形性関節症(OA)に特徴的な皮質骨肥厚と軟骨層の石灰化を、高精度のシンクロトロン放射光マイクロCT(SR-microCT)により明確に描出し、その構造的・組成変化を定量化することを目的としている。従来のmicroCTではエネルギー積分型検出器を使用しているため、皮質骨と石灰化軟骨の識別が困難であった。本研究では、OAマウスと対照群マウスの脛骨を用い、陰性造影剤Hexabrixで関節軟骨を染色したうえで、3µmボクセルでSR-microCT撮影を行った。得られた画像は二重しきい値法により皮質骨と石灰化軟骨を分離し、三次元形態指標およびX線減衰値を基に評価した。結果、SR-microCTは骨軟骨境界を鮮明に描出し、皮質骨と石灰化軟骨層を明確に区別できた。皮質骨のX線減衰値は石灰化軟骨のおよそ2倍であった。また、石灰化軟骨ではOA進行に伴う段階的な減衰値上昇が認められた。一方、皮質骨の減衰値は加齢やOA進行に対して大きな変化を示さず、組成変化の感受性が低いことが示された。
コメント
動物モデルでのOA実験において、microCT撮影は汎用手技であるが、石灰化軟骨と軟骨下骨の区別には苦慮する。本手法のSR-microCTを用いることで境界を明確に区別できるとともに、関節軟骨の石灰化を定量的に評価でき、OAによる進行性の組成変化を明らかにできる可能性も示された。
紹介演題 [2]
Risk of fracture in adulthood is associated with childhood fracture history independent of bone mineral density in women: The Geelong Osteoporosis Study
キーワード
骨折、骨粗鬆症、BMD
研究グループ
Natalie K Hyde, Mia A Percival, Amanda L Stuart, Kara B Anderson, Kara L Holloway-Kew, Julie A Pasco IMPACT, Deakin University, Geelong, Australia
サマリー
本研究は、小児期の骨折歴が成人期の骨折リスクやBMDにどのように関連するのかを明らかにすることを目的としている。対象は Geelong Osteoporosis Study の15年追跡データであり、小児期(20歳未満)および成人期(20歳以上)の骨折情報が揃った女性635名を解析した。小児期の骨折は自己申告、成人期は自己申告に加えて可能な限りX線像で確認した。BMDは大腿骨近位部および腰椎で測定し、単変量解析にはχ²検定とMann-Whitney U検定、多変量解析には現在の年齢、移動能力、身長、体重で調整したロジスティック回帰モデルおよび線形回帰モデルを使用した。単変量解析では、成人期に骨折した群は骨折していない群に比べて小児期に骨折していた割合が高かった(20.8% vs 14.3%、p=0.05)。BMDとの関連では、大腿骨頸部において小児期骨折の有無による差が境界的有意(p=0.08)であったものの、他の部位では差は認められなかった。多変量調整後、小児期の骨折歴は成人期の骨折を予測する有意な因子であり、成人期のBMDを加えてもこの関連は弱まらなかった。一方、小児期骨折と大腿骨頸部BMDの関連は、調整後には消失した。骨折リスクの高い行動特性やDXAでは捉えられない骨質変化など、別の要因が関与している可能性が示唆されている。
コメント
この研究結果から、小児期の骨折歴は成人期の骨折リスク増大と関連するが、その関連はBMDでは説明できないことが示された。他の演題でも盛んに議論されていたが、オーストラリアでは高齢期の骨折予防に対する若中年期からの介入に熱心な印象であった。
オーストラリアンサンプラープレート
2025年12月23日


