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ANZBMS 2025 レポート
野口 裕季子(北海道医療大学 歯学部 口腔構造・機能発育学系組織学分野)

紹介演題 [1]
Bioengineering of novel bone-grafting materials for oral applications

キーワード

宇骨再生、骨補填材、抗菌性

研究グループ

Dawn E Coates

サマリー

本研究では、口腔内という細菌環境が過酷な場面でも安全かつ効果的に使用できる、抗菌性と骨再生能力を併せ持つ新しい骨移植材の開発が試みられた。まず、リポ酸で表面修飾した銀ナノ粒子(AgNPs)が合成され、熱圧縮で作製した骨グラニュールやGelMAハイドロゲルに組み込まれた。得られた粒子は1〜12 nmと微小で、多くの口腔細菌に対しMICが12.5 μg/ml未満という高い抗菌作用を示した。さらに、AgNPsは160℃の加工条件でも安定性を維持し、GelMA内でも構造を保つことが確認された。ウサギ頭蓋骨欠損モデルでは、これらの複合材料が従来材であるBioOss®と同等の骨再生を示し、高い実用可能性が示唆された。

加えて、ニシンZ、マヌカオイル、β-トリケトンといった天然由来の抗菌物質をナノカプセル化した 100〜300 nm のナノスフェアも開発された。これらは単独でも、またGelMA・コラーゲン・PVAと組み合わせた場合でも抗菌活性が増強され、放出制御性や生体適合性にも優れていた。材料の種類に応じて放出プロファイルを調整できる点も大きな利点であり、応用範囲の広さが示された。

コメント

本研究の成果は、ナノテクノロジーを用いることで、骨再生と抗菌機能を同時に付与した次世代型の骨移植材を設計できる可能性を明確に示したものである。特に、術後感染のリスクが高い口腔領域では大きな臨床的価値を持つと考えられ、基礎・大動物実験レベルまで進んでいる点からも、今後の臨床応用への発展が期待される内容である。

紹介演題 [2]
Decoupling calcified cartilage from cortical bone reveals distinct mineralization patterns in an osteoarthritis mouse model

キーワード

変形性関節症、イメージング

研究グループ

Pholpat Durongbhan, Han Liu1, Ryan J. Choo, Colin Firminger, Thomas Steiner, Luc Nimeskern, Zixuan C. Zhao, Ralph Müller, Kathryn S. Stok

サマリー

本研究は、変形性関節症(OA)の病態における石灰化軟骨(calcified cartilage)と皮質骨(cortical bone)の役割を区別して評価するため、従来のmicroCTでは困難であった両組織の分離可視化を、シンクロトロン放射光microCT(SR-microCT)と造影剤を用いることで実現した点に大きな特徴がある。OAでは皮質骨の肥厚や石灰化軟骨の増大が古くから報告されているが、これらがどのように進行し、各組織がどのようなミネラリゼーション変化を示すかは十分に理解されていなかった。

本研究では、自然発症OAモデルであるSTR/ort マウスと正常対照 CBA/1マウスから採取した脛骨を試料として、Hexabrix™による軟骨造影後に3 μmの高解像度でSR-microCT撮影を行った。その後、二重しきい値法を用いて石灰化軟骨と皮質骨を厳密に分離し、三次元構造とミネラリゼーション指標を計測した。これにより、従来のエネルギー積分型検出器を用いるmicroCTでは識別困難であった両組織の境界が明瞭に可視化され、OA進行に伴う形態変化を個別に評価できた。

結果として、OAモデルでは石灰化軟骨の体積増加やミネラル密度の変化が皮質骨とは異なるパターンで進行することが明らかとなり、OAにおける関節末端のリモデリングが単一組織ではなく複数のミネラル化組織の協調的変化で構成されることが示された。この知見は、OA病態の初期診断指標や新規治療標的の探索に重要な示唆を与える。

コメント

本研究は、高解像度イメージング技術を用いた組織解析により、OAの骨・軟骨境界で生じる微細な変化を明確化し、従来捉えられなかったミネラリゼーション異常の理解を大きく前進させた意義深い成果である。

2025年12月23日