骨ルポ
ANZBMS 2025 レポート
前村 美希(昭和医科大学 大学院歯学研究科 顎顔面口腔外科学講座)
この度、第43回日本骨代謝学会学術集会において ANZBMS 2025 Travel Award、ANZBMS 2025 をいただき、ANZBMS 2025に参加いたしました。また、Plenary Poster Session にて発表の機会を得ることができ、初めて一人で海外学会に参加するとともに、初の海外渡航でもあり緊張もありましたが、私がテーマとしている硫黄代謝について広く発信することができ、大変貴重な経験となりました。
紹介演題 [1]
Vitamin D receptor ablation in mature osteoblasts causes hyperparathyroidism, hypervitaminosis D and osteomalacia during dietary calcium and phosphorus restriction
キーワード
ビタミンD、PTH、カルシウム・リン恒常性
研究グループ
Paul H Anderson, University of South Australia, Adelaide, Australia
サマリー
本研究では、成熟骨芽細胞におけるビタミンD受容体(VDR)活性の欠失が、食事性カルシウムおよびリン制限下における骨および全身の応答に及ぼす影響を検討した。
3週齢雌性マウスの骨芽細胞特異的VDR欠損マウス(ObVDRKO)およびWTマウスに、通常Ca/P食または低Ca/P食を17週間与え、20週齢時に解析を行った。通常食条件下では、ObVDRKOマウスに骨格異常や血清PTHを含む恒常性異常は認められなかった。一方、低Ca/P食条件下では、ObVDRKOマウスは短肢、成長板異常、骨端部拡大、無秩序な石灰化および高度な皮質骨多孔性を伴う重度の骨異常を呈し、骨量低下ではなく骨軟化症様表現型を示した。これらの変化は、低Ca/P食を与えたWTマウスでは認められなかった。さらに、低Ca/P食下のObVDRKOマウスでは、副甲状腺ホルモン(PTH)および1,25(OH)₂D₃濃度が著明に上昇しており、骨芽細胞VDR欠失がミネラル不足に対する正常な内分泌適応応答を阻害することが示された。以上より、骨芽細胞におけるVDR活性は、ミネラル不足時のPTH応答を制御し、骨および全身のカルシウム・リン恒常性を維持する上で不可欠であることが明らかとなった。
コメント
今後、骨芽細胞VDRがPTH–ビタミンD軸のどの段階で骨形成応答を制御しているのか、また局所骨組織特異的な役割がどのように異なるのかが解明されることで、ミネラル代謝異常に伴う骨疾患に対する新たな治療戦略につながることが期待される。
紹介演題 [2]
Osteoclast recycling as a potential mechanism driving rebound bone loss following denosumab withdrawal
キーワード
破骨細胞、OPG、osteomorph
研究グループ
Dougall M Norris, The University of Sydney, Sydney, Australia
サマリー
デノスマブ(Dmab)の中止後には、破骨細胞形成と骨吸収が急激に再亢進するリバウンド現象が生じ、多発性椎体骨折のリスクが高まることが知られている。本研究では、このリバウンド性骨量減少の機序として「破骨細胞のリサイクリング」に着目し、RANKL阻害解除後の破骨細胞動態を解析した。C57BL/6J マウスからRANKLデコイ受容体であるオステオプロテゲリン(OPG:Fc)を除去すると、RANKL濃度が早期に上昇し、破骨細胞の急速な再形成に伴って血清TRAP値が過剰に上昇した。さらに近年、破骨細胞前駆細胞の蓄積がリバウンド形成に寄与することが示されているが、発表者らはこれに加え、成熟破骨細胞が分裂(fission)して生じる細胞である「osteomorph」に注目した。初代マウス破骨細胞にOPG:Fcを投与すると、破骨細胞数は減少した一方で、アポトーシスに陥る破骨細胞は減少し、総細胞数は増加した。ライブセルイメージングでは、OPG:Fc処理により破骨細胞の分裂イベントが有意に増加しており、抗RANKL治療中にosteomorphが蓄積することが示された。これらの結果から、デノスマブ中止後の破骨細胞リバウンドには、破骨前駆細胞だけでなくosteomorphの再融合が関与する可能性が示唆された。
コメント
本演題は、2021年に Cell 誌において osteomorph を報告した Michelle M. McDonald らの研究グループによる最新の研究報告であった。デノスマブは骨粗鬆症治療薬として広く用いられている一方、歯科臨床の現場においては、薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)をはじめとする副作用への対応にしばしば苦慮する薬剤でもある。本研究で示された、デノスマブ中止後に破骨細胞が「リサイクル」される過程を可視化したライブセルイメージングは非常に印象的であり、破骨細胞動態に対する従来の理解を更新する重要な知見であると感じた。今後、デノスマブ中止後のリバウンド骨吸収やMRONJ発症機序の解明、さらには安全な治療戦略の構築につながる研究展開が期待される。
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2025年12月23日


