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β-アミノイソ酪酸(BAIBA)の両異性体はMRGPRD受容体を介して異なるシグナル経路により骨細胞のFgf23分泌を促進する

Both enantiomers of β-aminoisobutyric acid BAIBA regulate Fgf23 via MRGPRD receptor by activating distinct signaling pathways in osteocytes
著者: Sakamoto E, Kitase Y, Fitt AJ, et al.
雑誌: Cell Rep. 2024; 43:114397
  • FGF23
  • BAIBA
  • 運動

論文サマリー

運動により筋から分泌されるmyokineの1つに、アミノ酸代謝物であるBAIBA (β-aminoisobutyric acid)があり、肥満や心血管病、インスリン抵抗性を改善させうるとして近年注目されている。一方、運動後に尿中リン排泄、Fibroblast growth factor (FGF) 23が上昇することが報告されている。本論文では、BAIBAとFGF23の関連を、BAIBAの異性体(L-、D-BAIBA)別に検討した。IDG-SW3細胞、マウスの骨組織で、L-BAIBAは24時間後、D-BAIBAは72時間後のFgf23転写を増加させた。また、L-BAIBAはSost転写への影響は小さいか低下させたが、D-BAIBAは24時間後、72時間後のSost転写を増加させた。両異性体は同じ受容体(Mas-related G-protein-coupled receptor type D)を介していたが、L-BAIBAはGas/cAMP/PKA/CBP/b-catenin経路およびGaq/PKC/CREB経路を経てFgf23転写を増加させた一方、D-BAIBAはGai/NF-kB系よりスクレロスチン分泌を上昇させ、これを介してFgf23転写を間接的に上昇させていた。さらにマウスへL-、D-BAIBAを投与し、月齢や性別による反応の違いはあるものの、大まかにFGF23上昇、尿中リン排泄増加を認めた。以上の結果から、運動によりL-, D-BAIBAが上昇すると、異なる経路を介して直接的、間接的に骨細胞からのFGF23分泌が上昇すると考えられた。

推薦者コメント

運動に伴うリン変動に対する恒常性の維持機序の一端を解明し、筋-骨-腎連関を提唱する点で興味深い研究である。ヒトにおいて、運動後にFGF23および尿中リン排泄亢進したとの報告(J. Sci. Med. Sport 24, 297–300)での「運動」は、超長距離マラソン(246 km)であり、実際に本論文で示されたBAIBA-FGF23分泌をきたす運動の強度や持続時間についての今後の検討は必要であろう。このような極端な長距離走では足底筋の挫滅により、破壊された細胞から血中へのリンの移動が生じると予想される。その場合FGF23の分泌上昇は血中リン濃度を維持するための生理的な調整に他ならないまた、FGF23は翻訳後修飾により活性型(intact FGF23)の分泌量が決定されるが、BAIBA投与に対するマウスの月齢や性別による反応性の違いは、この翻訳後修飾の影響も考慮される。

日髙 尚子・伊東 伸朗(東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科) 

(2026年7月15日)