筋肉内のPrg4陽性線維脂肪前駆細胞は骨折修復において重要な役割を果たす
Prg4+ fibroadipogenic progenitors in muscle are crucial for bone fracture repair.
| 著者: | He Q, Lu J, Liang Q, et al |
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| 雑誌: | Proc Natl Acad Sci USA. 122(31):e2417806122, 2025 |
- Prg4
- 骨折修復
- 脂肪前駆細胞
論文サマリー
骨折治癒は、筋肉の被覆が不十分な場合や筋腫脹(compartment syndrome)が生じた場合にしばしば障害されることが知られている。筋間質に存在する間葉系前駆細胞である線維脂肪前駆細胞(fibroadipogenic progenitors:FAPs)は、通常、線維組織や脂肪組織へ分化するが、特定の条件下では骨再生に寄与する骨膜細胞へと転換する能力を有する。プロテオグリカン4(Proteoglycan 4:Prg4)は、筋組織内に局在する特定のFAPサブポピュレーションを標識する分子であり、この細胞群は骨膜や皮質骨、正常な骨髄には存在しない。本研究では、腱由来FAPsではなく、筋内に存在するPrg4⁺ FAPsが骨折の修復に主要な役割を果たすことを明らかにした。急性損傷後、筋内のPrg4⁺ FAPsは増殖し、骨膜細胞への分化能を獲得する。さらに、骨膜へ移行したPrg4⁺ FAP由来細胞は、二次損傷時にも再び骨折治癒に寄与する骨膜性間葉系前駆細胞として機能することが示された。さらに、細胞枯渇実験の結果、Prg4⁺ FAPsは仮骨形成および骨修復に不可欠であることが確認された。
推薦者コメント
本研究は、組織間のtransdifferentiationや線維芽細胞の可塑性に関する既存の概念をさらに発展させるものである。また、骨再生において筋組織が重要な役割を果たすことを改めて示し、局所的な骨治癒を促進する新たな治療標的となる可能性を示唆している。
東京歯科大学口腔科学研究センター・Desai Karishma・溝口 利英
(2025年10月30日)



