骨転移巣は破骨細胞によるオステオポンチン産生を介して骨外腫瘍に対する免疫チェックポイント阻害薬の効果を減弱させる
| 著者: | Cheng JN, Jin Z, Su C, et al. |
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| 雑誌: | Cancer Cell. 2025; 43: 1093-1107.e9. |
- オステオポンチン
- 骨転移
- 免疫チェックポイント阻害薬
論文サマリー
骨転移巣は免疫チェックポイント阻害(ICB)療法に対して反応が乏しいことが知られている。本研究では,複数の臨床コホートとモデルマウスにおいて,骨転移の存在が骨外腫瘍にICB抵抗性をもたらすことを確認した。その機序として,骨転移巣の腫瘍組織の作用により破骨細胞がオステオポンチン(OPN)を産生し,それが骨外腫瘍に遠隔的に作用することを明らかにした。血行循環を介して運ばれたOPNは骨外腫瘍の微小環境を再構築し,ICBの効果発揮に必須となるT細胞のリクルートやCD8⁺TCF1⁺前駆細胞の分化を阻害した。マウスを用いた実験では,破骨細胞形成を抑制する抗RANKL抗体,循環中OPNの中和,あるいは破骨細胞特異的OPN欠損によって,ICBへの応答性が回復することが示された。さらに,これらの作用機序と治療効果は,臨床コホートにおける抗RANKL抗体とICBの併用療法でも確認することができた。これらの知見は,骨が腫瘍転移によって誘導される特異的な免疫調節臓器であることとともに,骨転移患者において破骨細胞の分化成熟がICB治療の効果を改善する有望な標的となる可能性を示している。
推薦者コメント
骨転移が破骨細胞によるOPN分泌を介して骨外腫瘍におけるICB療法の効果を低下させることを示した報告である。ICB療法に対する抵抗性が骨転移巣のみならず,液性因子を介して骨外に存在する原発巣にも伝播することは非常に興味深い。近年,骨転移を有する悪性腫瘍患者を対象とする臨床試験においてICB療法と抗RANKL抗体デノスマブの併用効果を示す結果が報告されており,その背景にある機序の一つと考えられる。患者予後の改善に直結する知見であるとともに,今後,悪性腫瘍と転移巣の相互作用に関する研究がさらに活性化することを期待したい。
東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科学・駒場 大峰
(2025年10月30日)



