高血圧はマウスモデルにおいて骨吸収を促進し,骨量減少と骨脆弱性を引き起こす
| 著者: | Hennen EM, Uppuganti S, de la Visitación N, et al. |
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| 雑誌: | J Clin Invest. 2025; 135: e184325. |
- 高血圧
- 骨粗鬆症
- 免疫細胞
論文サマリー
炎症性疾患は二次性骨粗鬆症の代表的要因のひとつである。高血圧は非常に頻度の高い炎症性疾患でもあり,臨床的に骨密度の低下や脆弱性骨折のリスク上昇と関連している。本研究では,高血圧の2つのマウスモデルにおいて,骨量と骨強度の著しい低下が生じることを示した。これには,骨髄内の単球,マクロファージ,およびIL-17A産生T細胞サブタイプを含む免疫細胞集団の増加が伴っていた。アンジオテンシンII注入による高血圧マウスにIL-17Aを中和すると,破骨細胞形成の減少を介して高血圧による骨量および骨強度の低下が抑制された。同様に,CSF1受容体の阻害も高血圧マウスにおける骨量減少を抑制し,骨強度の低下を防いだ。UK Biobankデータの解析では,2万7,000人以上のヒトにおいて骨代謝マーカーが血圧および骨密度と顕著な関連を示すことが確認された。これらの結果より,高血圧は骨髄内の免疫細胞を活性化し,破骨細胞形成を促進することにより骨量と骨強度の低下を引き起こすものと考えられる。
推薦者コメント
高血圧が骨髄内の免疫細胞を活性化し,破骨細胞による骨吸収の亢進と骨量低下を引き起こすことを示した研究である。高血圧は非常に頻度の高い疾患であり,本研究で観察された現象がヒトでも同様に起こるとすれば,その臨床的影響はきわめて大きいと考えられる。また,高血圧は心血管イベントなどさまざまな疾患のリスク因子であるため,血圧管理の新しい意義が示されたものとも考えられる。一方で,骨粗鬆症は多因子疾患であるため,高血圧への介入のみで全体の骨折リスクをどの程度低減できるかは今後の検証が必要である。降圧薬の使用,薬剤間の比較など,高血圧への治療介入が骨折リスクにどの程度影響するのか,過去の臨床試験の二次解析などで検証されることを期待したい。
東海大学医学部内科学系腎内分泌代謝内科学・駒場 大峰
(2025年10月30日)



