
過剰なTGFβが癌骨転移に伴う筋力低下をもたらす
Excess TGFβ mediates muscle weakness associated with bone matastases in mice.
著者: | Waning DL, Mohammad KS, Reiken S et al : |
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雑誌: | Nature Medicine 21: 1262-1271, 2015 |
論文サマリー
癌の骨転移に伴い,骨基質から放出されるTGFβが骨格筋の収縮力を低下させることを示した.TGFβシグナルは,NADPH4の発現を誘導する.NADPH4は,筋小胞からのカルシウム放出を司るRyanodine receptor and calcium release channelの酸化を促し,筋小胞からカルシウムをリークさせる.このようなカルシウム放出の調節不全により筋力の低下が起こることが示された.
推薦者コメント
乳癌に加えて,肺癌,前立腺癌,多発性骨髄腫など骨吸収を伴う腫瘍では,筋力が低下することが示されており,興味深い.さらに,TGFβシグナルの阻害,ビスホスホネート投与により骨吸収を阻害すると,骨転移に伴う筋力低下を防げることを示した.腫瘍以外の原因で骨吸収が亢進する疾患でも,筋力低下が起こるか,今後の進展が楽しみである.(松本歯科大学総合歯科医学研究所硬組織機能解析学 教授・小林 泰浩)