The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

1st Author

TOP > 1st Author > 重廣 司

自己増強性IL-1βシグナルはTCF3::HLF陽性B細胞急性リンパ芽球性白血病の悪性化に寄与する

Self-reinforcing IL-1b signaling accelerates the development and recurrence of TCF3:: HLF-positive B-ALL
著者: Suzuki A, Shigehiro T, Hirakawa M, Hirano R, Tamai M, Akahane K, Okamoto K, Takayanagi H, Terashima Y, Ueha S, Kitami T, Takagi M, Keino D, Kawaguchi H, Kato K, Hino M, Inukai T, Yoshimura A, Ikawa T.
雑誌: Blood (2026) 147 (21): 2472–2488. 10.1182/blood.2025031521
  • TCF3::HLF
  • IL-1β
  • RANKL

論文サマリー

TCF3::HLF融合遺伝子を有するB前駆細胞性急性リンパ性白血病(B-ALL)は、小児B-ALLの中でも極めて予後不良で、強い治療抵抗性を示す難治性サブタイプである。本病型では高頻度に重篤な骨破壊が認められるものの、その分子機構はこれまで不明であった。

本研究では、我々が独自に開発した多能性血液前駆細胞である人工白血球幹(iLS; induced Leukocyte Stem)細胞を基盤として、世界に先駆けてTCF3::HLF型B-ALLの発症マウスモデルの樹立に成功した。本モデルは患者の病態を忠実に再現し、顕著な骨破壊を伴うことを確認した。さらに、本モデルを用いた解析により、TCF3::HLF型B-ALL細胞ではIL-1βを中心とする炎症性サイトカイン群およびRANKLの発現が著しく亢進していることを見出した。

そこで、本モデル由来TCF3::HLF型B-ALL細胞においてIL1B遺伝子を欠損させたところ、白血病細胞の増殖抑制、RANKL発現の低下、骨破壊の抑制に加え、移植マウスの生存期間延長が認められた。また、IL-1β阻害剤とRANKL阻害剤を併用すると、いずれの単剤投与を上回る顕著な延命効果と骨破壊抑制効果が得られた。さらに、TCF3::HLFによるIL1B発現制御機構を詳細に解析した結果、TCF3::HLFがB-ALL特異的なIL1Bエンハンサー領域へ直接結合し、IL1B転写を活性化していることを明らかにした。実際、このエンハンサー領域を欠損させるとIL-1β発現は著明に低下した。加えて、ヒト臨床検体の解析から、IL1B発現は再発時に顕著に上昇することが判明した。また、IL-1β阻害剤がヒトTCF3::HLF型B-ALL細胞株の増殖を抑制することも確認された。

以上の結果から、TCF3::HLF型B-ALLでは、TCF3::HLFがIL1Bの転写を直接活性化し、IL-1β/IL1Rシグナルを自律的に増強することで、骨破壊と白血病の悪性化を促進することが明らかとなった(図1)。すでに、IL-1β/IL1R阻害剤(カナキヌマブやアナキンラ)やRANKL阻害剤(デノスマブ)は他疾患に対して臨床使用されていることから、本研究成果はTCF3::HLF型B-ALLに対する新たな分子標的治療戦略の開発につながる重要な知見である。


図1.TCF3::HLF型B-ALLのIL-1β発現誘導による自己増強的増殖促進と骨破壊誘導機構

著者コメント

本論文では、我たちが独自に開発した血液前駆細胞であるiLS細胞を用いることで、世界で初めてTCF3::HLF型B-ALLの発症と病態を再現するマウスモデルの樹立に成功しました。さらに、本モデルを活用して白血病の自律的な悪性化機構と骨破壊の分子メカニズムを解明しました。当研究室では、血液前駆細胞を大量培養する独自技術を基盤として、造血・免疫系の分化制御や発がん機構の解明、ならびに次世代免疫細胞療法の開発に取り組んでいます。「個々の探究心を大切に」をモットーに理学・工学・薬学・医学など多様なバックグラウンドを持つ学生やスタッフと研究を進めています。現在、大学院生および研究員を募集しておりますので、興味のある方は、是非ご連絡ください。

重廣 司(東京理科大学 生命医科学研究所 免疫アレルギー部門)

2026年6月30日