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低酸素下の骨細胞で増加したリポカリン2はRANKL誘導性の破骨細胞形成を促進する

Lipocalin-2 upregulation in hypoxic murine osteocytes enhances RANKL-induced osteoclastogenesis
著者: Kohei Narita, Fumitoshi Ohori, Aseel Marahleh, Jinghan Ma, Jiayi Ren, Angyi Lin, Ziqiu Fan, Kou Murakami, Hideki Kitaura
雑誌: Scientific Reports (2026) 16:4512 doi: 10.1038/s41598-025-34575-2
  • 骨細胞
  • 低酸素
  • リポカリン2

論文サマリー

骨細胞は骨芽細胞および破骨細胞を制御することにより骨代謝の恒常性維持を行う”司令塔”として近年注目されている。特に、骨細胞は破骨細胞分化に必須であるRANKLを発現し、骨吸収の調節に深く関与している。一方、骨組織における低酸素環境は、骨粗鬆症、関節リウマチなどで認められ、破骨細胞形成や炎症反応との関連が示唆されている。矯正学的歯の移動時においても、歯が移動する方向である圧迫側の歯周組織において低酸素環境が形成されることが知られている。しかし、低酸素刺激を受けた骨細胞がどのような分子機構を介して破骨細胞形成を制御するのかについては、十分には明らかにされていなかった。そこで本研究では、低酸素環境下の骨細胞における遺伝子発現変化を網羅的に解析し、破骨細胞形成に関与する分子機構を検討した。

まず、骨細胞様細胞であるMLO-Y4細胞を低酸素条件下で培養し、RNAシーケンス解析を行った。その結果、リポカリン2(LCN2)が低酸素刺激によって最も顕著に発現上昇する遺伝子として同定された。さらに、リアルタイムPCRの結果より低酸素刺激は骨細胞におけるLcn2およびRanklの発現を増加させることが確認された。また、この傾向はDMP1-Topazマウス由来の初代骨細胞においても認められた。次に、LCN2の骨細胞に対する直接的な作用を検討した。その結果、MLO-Y4細胞においてLCN2は、その受容体である24p3Rを介してRANKL発現を増加させることを確認した。さらに、LCN2の破骨細胞形成に対する作用を検討した。その結果、LCN2は破骨細胞前駆細胞に直接作用して破骨細胞形成を誘導しなかった。一方、骨細胞との共培養系では、LCN2は破骨細胞形成を有意に促進した。これらの結果から、LCN2は骨細胞に作用し、RANKL発現を増加させることにより、間接的に破骨細胞形成を促進することが示された。

さらに、マウスの矯正学的歯の移動モデルにおいて、圧迫側の歯槽骨において低酸素誘動因子であるHIF-1αおよびLCN2陽性骨細胞が増加し、破骨細胞形成が認められた。加えて、LCN2中和抗体を投与し、矯正学的歯の移動を行うと、圧迫側の破骨細胞数は有意に減少した。これらのことから、低酸素環境下の骨細胞において発現上昇したLCN2は、骨細胞のRANKL発現を増加させることにより破骨細胞形成を促進し、骨吸収に関与することが示された。


低酸素環境下で骨細胞から分泌されたLCN2は、骨細胞自身に作用することにより破骨細胞形成関連因子であるRANKLの発現を促進し、間接的に破骨細胞形成を促進する

北浦 英樹(東北大学歯学研究科 顎口腔矯正学分野)

著者コメント

矯正学的歯の移動における骨細胞の役割に関心をもち研究を進めてきました。本研究では、矯正学的歯の移動時の圧迫側に生じる低酸素環境に着目し、骨細胞の網羅的解析からリポカリン2という分子にたどり着きました。in vitroでの解析に加えて、矯正学的歯の移動モデルでもその関与を示すことができ、低酸素環境下の骨細胞が破骨細胞形成を制御する仕組みの一端を明らかにできたことを嬉しく思っています。今後は、低酸素環境下の骨細胞を介した代謝変化について、さらに研究を発展させたいと考えています。本研究は、ご指導いただいた北浦英樹先生、研究グループの皆様、そして、医局の皆様のご支援なくして完成し得ませんでした。この場を借りて深く感謝申し上げます。

成田 昂平(東北大学歯学研究科 顎口腔矯正学分野)

2026年6月30日