The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

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Lepr陽性歯根膜骨格幹・前駆細胞の遺伝子プロファイルならびに加齢と骨修復における機能

Genetic profile of Lepr+ skeletal stem/progenitor cells in the periodontal ligament and functional compensation during aging and bone repair
著者: Satsuki Shidara, Shinichirou Ito, Karishma Desai, Akihide Tokuyama, Ran Leng, Mana Kawakami, Satoru Matsunaga, Toshihisa Komori, Akihiro Hosoya, Yasushi Nishii, Toshihide Mizoguchi
雑誌: Bone. 2026 May:206:117833. doi: 10.1016/j.bone.2026.117833.
  • 歯根膜骨格幹/前駆細胞
  • レプチン受容体
  • 歯根膜

筆者(2024年、東京歯科大学口腔科学研究センターにて)

研究グループメンバーとの集合写真(2026年、東京歯科大学学会にて)。左からDesai Karishma先生、溝口利英教授、筆者、西井康教授、笠原正貴教授、冷然先生

論文サマリー

歯根膜線維芽細胞(PDLCs)には骨格幹/前駆細胞 (SSPCs) が含まれており、歯周組織の維持に寄与することが知られている。これまでに、レプチン受容体陽性 (Lepr) PDLCsは、骨芽細胞やセメント芽細胞へ分化する能力を有するSSPCs として報告されている。しかしながら、LeprPDLCs の特徴については未だ十分に明らかにされていない。そこで本研究では、LeprPDLCsの分化機構と、SSPCとしての長期的な維持機構ならびに修復骨への寄与を検討することで、LeprPDLCsが歯周組織の恒常性維持に果たす役割を明らかにすることを目的とした。

LeprPDLCsの遺伝子プロファイルを明らかにするため、Lepr-Cre; ROSA26-tdTomato(R26-Tom); Runx2-GFPマウスを用いて歯根膜組織のシングルセルRNAシーケンス解析を行った。その結果、LeprPDLCsは Runx2陽性と陰性の2つの集団から構成され、Runx2陰性細胞ではThy1の発現が認められた。一方、両集団において既報の歯根膜SSPC マーカーである Axin2 、Gli1、Acta2 の特異的な発現は認められなかった。さらに、擬時間解析により、Runx2陰性のLeprPDLCs がRunx2の発現上昇を伴いながら骨芽細胞やセメント芽細胞に分化することが示された (図1)。


図1:Lepr歯根膜細胞はRunx2の上昇を伴いながらセメント芽細胞・骨芽細胞に分化する。Lepr-Cre; ROSA26-tdTomato; Runx2-GFPマウスの歯根膜組織のシングルセルRNA-seq解析を行った。Lepr歯根膜細胞 (歯根膜4, 歯根膜6) はSSPCマーカーであるApod、Gygb、Mfap5を発現しており、Thy1は歯根膜6に特異的に発現していた。一方、他の歯根膜SSPCマーカーであるAxin2、Gli1、Acta2の特異的な発現は認められなかった。擬時間解析に結果、LeprRunx2-PDLCsはRunx2の発現上昇を伴いながら、セメント芽細胞・骨芽細胞に分化することが示された。

タモキシフェン誘導性のLepr-CreERマウスを用いてLepr⁺PDLCsの長期的な動態解析を行った結果、これらの細胞は歯根膜組織内で長期間維持されながら、徐々に増加することが明らかとなった。一方で、LeprPDLCsは歯槽骨の骨細胞やセメント細胞へ分化したが、Lepr骨細胞は2カ月をピークに、Leprセメント細胞は半年をピークに増加し、その後減少に転じた。特に、Leprセメント細胞は1年後には認められなかった。これらの結果は、LeprPDLCsが歯槽骨とセメント質の恒常性維持に寄与する一方、その寄与は長期的には限定的であることを示している。

さらに、抜歯後の骨修復におけるLeprPDLCsの機能を解析するため、Lepr-CreER; R26-TomマウスおよびLepr-Cre; ROSA26-DTR/Tomマウスを用いて、Lepr細胞の細胞系譜解析と枯渇実験を行った。その結果、LeprPDLCsは抜歯窩の修復骨細胞に分化するものの、その寄与は限定的であることが明らかとなった 。

以上の結果から、LeprPDLCs は歯周硬組織に寄与する一方、その機能は加齢とともに低下し、また、抜歯後の骨修復への寄与も限定的であることが明らかとなった。これは、歯周組織の恒常性維持および組織修復は、他の SSPCs が機能的に補完している可能性を示唆する。

著者コメント

本研究でのシングルセルRNA-seq解析の結果から、Lepr+PDLCsは、骨芽細胞やセメント芽細胞と比較してRANKLの発現が高い傾向にあり、破骨細胞分化を誘導する可能性が示唆されました。現在は、本研究をさらに発展させ、炎症環境下や矯正的歯の移動時におけるLepr+PDLCsの破骨細胞分化誘導能の解析を進めています。

最後に、本研究をご指導いただきました、東京歯科大学口腔科学研究センター教授の溝口利英先生をはじめ、本研究にご協力いただいた共著者の先生方、サポートいただいた皆様に、心より感謝申し上げます。

設樂 沙月(東京歯科大学 薬理学講座)

2026年6月30日