低ホスファターゼ症の病態形成に無機リン酸の産生障害と細胞外ATPシグナルの変化が関与する:ALPLノックアウトヒトiPS細胞モデルを用いた解析
| 著者: | Miwa Yamazaki, Ayu Ueta, Tatsuro Nakanishi, Kanako Tachikawa, Masanobu Kawai, Keiichi Ozono, Toshimi Michigami |
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| 雑誌: | Bone. 2025 Dec:201:117629. doi: 10.1016/j.bone.2025.117629. Epub 2025 Sep 7. |
- 低ホスファターゼ症
- TNSALP
- ATP
写真:左端;著者(山崎)、右から3番目;道上敏美部長
論文サマリー
低ホスファターゼ症(HPP)は組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNSALP)をコードするALPL遺伝子の機能喪失に基づき、骨石灰化障害や乳歯早期脱落など多彩な症状を呈するが、病態形成機構は完全には理解されていない。そこで、健常人由来iPS細胞にCRISPR/Cas9を適用してALPL-knockout(KO)細胞を樹立し、骨芽細胞系列に分化誘導して解析を試みた。複合ヘテロ変異が同定されたKOクローン#1及び#2と片アレルにのみ変異が誘導されたhetero KO を解析に用いた。KO #1及び#2においてはTNSALP酵素活性が完全に喪失しており、hetero KOはALPL以外は遺伝的に同質なisogenic controlの半分程度の残存活性を保持していた。リン供与体としてβグリセロリン酸を含む骨芽細胞分化誘導培地を用いて培養したところ、KO #1及び#2においては、培養期間を通じてアリザリンレッド染色で示されるin vitro石灰化が著明に抑制されていた。一方、hetero KOにおいては、培養2週目以降、isogenic controlと同等の石灰化を示した。βグリセロリン酸の代わりに3 mMのリン酸を含む培地を用いて骨芽細胞に分化誘導したところ、KO #1及び#2においても石灰化は回復したが、ハイドロキシアパタイトに特異的に結合するOsteoImage蛍光色素による染色パターンはisogenic controlやhetero KOとは異なっていた。βグリセロリン酸を用いた分化誘導時、ALPL-KO iPS細胞では細胞外PPiとATPが増加を示し、細胞外ATPがTNSALPの基質となることが確認された。さらに、ALPL-KO iPS細胞では石灰化の障害にも関わらず、isogenic controlに比しRUNX2の発現は維持され、Osteopontinの発現が増加していた。またATP受容体のうち、骨量制御への関与が報告されているP2X7の発現が低下していた。これらのことからHPPの病態形成に、骨芽細胞微小環境中のリン酸産生障害と細胞外ATPシグナルの変化が関与していることが示唆された。

図:ALPLの欠損はリン酸の産生障害および細胞外ATPの上昇を介してリン酸応答性やATPシグナルに影響を及ぼす
著者コメント
我々は以前から、HPPにおけるALPL変異解析や遺伝子型―表現型解析および骨格形成におけるTNSALPの機能に関する研究に従事してきました。TNSALPに関する研究を長期間継続してきたことから、今回新たな結果が得られるたびに高揚しつつ研究を進めることができました。また細胞外ATPがTNSALPの基質であることが確認され、細胞外ATPシグナルの変容が示されたことから、今後さらに解析を進めたいと考えています。最後に、ご指導いただきました道上敏美先生、お世話になった先生方、研究室の皆様に深く感謝いたします。
山崎 美和(大阪母子医療センター研究所 骨発育疾患研究部門)
2026年6月30日



