脂肪組織のアロマターゼは雄性マウスにおいてリン代謝を介して骨量を維持する
| 著者: | Aoi Ikedo, Michiko Yamashita, Maiko Hoshino, Yosuke Okuno, Megumi Koike, Minori Uga, Kazuya Tanifuji, Hiroko Segawa, Seiji Fukumoto, Yuuki Imai. |
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| 雑誌: | J Bone Miner Res. 2026 Mar 2;41(3):324-335. doi: 10.1093/jbmr/zjaf129. |
- 脂肪組織
- アロマターゼ
- リン代謝

論文サマリー
CYP19A1の機能喪失型変異を持つ男性患者が骨量減少を示すことから、アロマターゼは骨量の維持に寄与することが知られている。アロマターゼ阻害薬による治療もまた、男性および閉経後女性において骨量減少を引き起こす。このことは、男性におけるテストステロンの骨同化作用の一部が、生殖腺組織以外のアロマターゼによって生合成されるエストラジオール(E2)に依存していることを示唆している。しかし、局所で生合成されたE2がどのように骨量維持に寄与しているのかは、依然として不明なままであった。
我々は、細胞特異的アロマターゼ遺伝子欠損(KO)マウスを用いて、生殖腺以外の局所組織におけるアロマターゼの機能を検証した。骨芽細胞特異的アロマターゼKOマウスは骨表現型を示さなかったため、我々はステロイドホルモンの貯蔵庫として知られる脂肪組織に着目し、脂肪組織特異的アロマターゼKO(AroΔaP2)マウスの骨表現型を解析した。
16週齢の雄性AroΔaP2マウスは、対照群と比較して、脛骨および大腿骨骨密度の低下を認め、特に海綿骨において顕著であった。骨形態計測の結果、AroΔaP2マウスは、類骨量および類骨幅の増加、ならびに破骨細胞面積および破骨細胞数の減少を伴う、石灰化不全の骨表現型を示すことが明らかになった。さらに、AroΔaP2マウスでは血清リン、腎臓でのリン再吸収の低下を示すものの、血清FGF23が有意に低値であったことから、AroΔaP2における石灰化不全表現型はFGF23の過剰な活性によるものではないことが示唆された。そこで、我々は腎臓に局在するリン酸トランスポーターであるNaPi2aおよびNaPi2cの発現を解析したところ、腎刷子縁膜小胞におけるタンパク質発現レベルがAroΔaP2マウスで有意に低下していることを見出した。
以上の結果から、脂肪細胞のアロマターゼによって局所で生合成されるエストロゲンが、NaPi2による腎臓のリン再吸収の調節を介して、骨量維持に重要な役割を果たしている可能性が示めされた。

Graphical Abstract
著者コメント
本研究は、今井先生が2010年頃から開始された研究です。当時は存在しなかったアロマターゼfloxマウスを星野先生や奥野先生が作製され、山下先生が骨芽細胞特異的アロマターゼKOマウスの作出と解析を進めてこられました。私は、脂肪組織特異的アロマターゼKOマウスの解析からこの研究に参画させて頂きました。解析を進める中でリン代謝異常の可能性が浮上し、福本先生、瀬川先生、谷藤先生、宇賀先生、小池先生に多大なるご協力をいただきました。アロマターゼは発現量が非常に低く検出が難しかったこと、脂肪・腎臓・骨という3つの組織にまたがるメカニズムを証明する難しさ、そしてマウスモデルの特性を深く理解して結果を解釈することなど、多くの壁にぶつかりながらも、非常に多くのことを学ばせていただいた研究テーマでした。本研究にご協力をいただきました皆様に、心より感謝申し上げます。
池戸 葵 (北海道大学大学院歯学研究院生化学教室 助教, 愛媛大学プロテオサイエンスセンター病態生理解析部門 客員研究員)
2026年6月30日



