The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

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卵白アルブミン誘導喘息はPiezoチャネル抑制を介して骨を減少させる

Ovalbumin-induced asthma leads to bone loss with Piezo channel suppression in mice.
著者: Weiqi Gao, Takeshi Sawada, Ailin Cao, Reiko U. Yoshimoto, Yu Yamaguchi, Yukie Takahashi, Takaichi Fukuda, Yasuyoshi Ohsaki, Reona Aijima, Tomoko Kadowaki, Takayuki Tsukuba, Mizuho A. Kido
雑誌: Commun Biol 8, 1309 (2025). Published: 29 August 2025 https://doi.org/10.1038/s42003-025-08753-x
大学プレスリリース: https://www.saga-u.ac.jp/koho/education/2025090938457
  • 細胞内小器官
  • 骨芽細胞
  • アレルギー


城戸研究室

論文サマリー

喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を有する患者は骨密度が低く、骨折リスクが高いことが知られています。こうしたアレルギー疾患患者の骨脆弱性は、アレルギー症状を緩和するためのステロイド(糖質コルチコイド)薬の副反応によるものと理解されています。私たちは、アレルギー疾患自体が骨代謝に与える直接的な影響、つまりステロイド薬の影響がない喘息惹起のみで骨量が減少することを解明しました。

卵白アルブミン(OVA)を用いて喘息を誘発したマウスでは、溶媒投与の対照群と比較して大腿骨や脛骨の骨量が減少し、骨梁が細くなりました。喘息マウスの骨表面では、成熟型骨芽細胞の数が減少する一方で、骨を吸収する破骨細胞数が増加し、骨基質の主成分であるI型コラーゲンの発現も低下していました。骨形成を促す重力センサーであるPiezo1とPiezo2の発現は、喘息マウスの骨芽細胞では抑制されていました。超解像顕微鏡および電子顕微鏡による観察から、Piezo1やPiezo2は骨表面に存在する成熟型骨芽細胞の細胞膜表面に局在するだけでなく、Piezo1は小胞体に、Piezo2はゴルジ体に主に局在していました。そして、喘息惹起は、これら細胞内器官におけるPiezoチャネルの発現を減らしました。Piezo1の作動薬Yoda1を投与したところ、喘息による骨量減少が改善され、骨形成とI型コラーゲン発現が回復しました。Piezo2ヘテロ接合体欠損マウスでは、喘息誘発による骨減少がより顕著でした。

本研究から、ステロイド投与を受けなくても、アレルギー性喘息そのものが骨代謝に悪影響を及ぼすことがわかりました。そして、Piezoチャネルの発現低下は、喘息による骨形成低下を説明する重要な分子機構の一つであると考えられます。この研究を行っている最中に、英国と米国の大規模患者調査にて、アトピー性皮膚炎やアレルギー性喘息の患者は骨折の頻度が高く、その傾向は年齢・性別やステロイド投与の影響を統計的に調整した後も認められることが報告されました。国内でもアレルギー疾患患者は増加傾向にあります。アレルギー疾患を骨減少のリスクとして理解し、症状を緩和する治療を継続的に受け、骨減少を防ぐことが、将来の骨の質や量の確保に繋がる可能性があります。そして、Piezoチャネルの調節は、アレルギー疾患に伴う骨減少を予防・治療に向けた新たなアプローチの一つと考えられます。


Graphical Abstract

著者コメント

Piezoチャネルは2010年にPatapoutian博士の研究グループが発見した、加わる力の大きさに応じて活性化するユニークなタンパクです。私たちは、力覚の面白さに感動して、特異的な抗体作製に取り掛かりましたが、研究室の異動などで思うように進められない時期も経験しました。Piezoチャネルが2021年のノーベル医学生理学賞の対象となり勇気づけられた一方で、新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延により日本に入国できず、研究が滞る辛い時期もありました。幸い多くの方のお力添えで論文を発表することができ、心より感謝しています。現在、アレルギー疾患による骨減少のメカニズムの解明を続けています。

謝辞

本研究は、骨代謝学会のフロンティア研究者助成および日本学術振興会科学研究費補助金 20K21683、24K23594の助成により行うことができました。心よりお礼を申し上げます。

高 玮琦(佐賀大学医学部生体構造機能学講座組織神経解剖学分野)

2026年6月30日