The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

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腰椎正面X線画像から腰椎・大腿骨近位部骨密度を推定するAI骨粗鬆症診断補助システムの開発

Development of artificial intelligence-assisted lumbar and femoral BMD estimation system using anteroposterior lumbar X-ray images
著者: Toru Moro, Noriko Yoshimura, Taku Saito, Hiroyuki Oka, Sigeyuki Muraki, Toshiko Iidaka, Takeyuki Tanaka, Kumiko Ono, Hisatoshi Ishikura, Naoya Wada, Kenichi Watanabe, Masayuki Kyomoto, Sakae Tanaka
雑誌: J Orthop Res. 2025 Sep;43(9):1619-1631. doi: 10.1002/jor.70000. Epub 2025 Jul 9.
  • 人工知能(AI)
  • 骨密度
  • 骨粗鬆症診断


臨床応用を支える医学系開発メンバー(2026年5月 第99回日本整形外科学会学術総会にて)
左から、飯干真由先生、熊埜御堂雄大先生、石倉久年先生、田中健之先生、筆者、田中栄先生、岡敬之先生


AI技術開発を支える工学系開発メンバー(2026年6月 東京大学分子ライフ・イノベーション棟の研究室にて)
左左から、東隆先生、髙木貴文さん、柴田美咲さん、関七歩さん、筆者
モニター上段 渡邊梓さん、池田豊さん モニター下段 古木淳也さん

論文サマリー

骨粗鬆症は脆弱性骨折の主要な原因であり、高齢化の進展とともにその早期発見と治療の重要性が高まっている。しかし、骨粗鬆症診断の標準検査であるDXA(dual-energy X-ray absorptiometry)は、専用装置や検査体制が必要であり、十分に普及しているとは言い難い。そのため、実臨床では骨折後に初めて骨粗鬆症と診断される症例も少なくなく、より簡便なスクリーニング・診断補助手法の開発が求められている。

本研究では、日常診療で広く撮影されている腰椎正面X線画像から、人工知能(AI)を用いて腰椎および大腿骨近位部の骨密度(BMD)を推定する診断補助システムを開発した。研究には大規模住民コホート研究であるROAD(Research on Osteoarthritis/Osteoporosis Against Disability)研究のデータを用い、1454例の腰椎X線画像とDXA測定値を解析した。

AIモデルは深層学習を用いて構築され、DXAで測定した腰椎および大腿骨近位部BMDを教師データとして学習した。5分割交差検証により性能を評価した結果、AI推定値とDXA実測値との間には良好な相関が認められた。腰椎BMD推定では平均絶対誤差(MAE)0.076 g/cm²、相関係数0.89、大腿骨BMD推定ではMAE 0.071 g/cm²、相関係数0.74を示した。また、osteopeniaおよびosteoporosisの判別においても高い性能を示し、骨粗鬆症スクリーニング・診断補助手法として有用である可能性が示された。

特に、本システムは腰椎X線画像に直接描出されない大腿骨近位部の骨密度推定も可能であった。これは、AIが局所的な画像所見のみならず、全身の骨量や骨質を反映する画像特徴を学習している可能性を示唆している。従来の画像診断では捉えにくかった情報を活用できる可能性を示す興味深い結果であり、骨格全体の状態を反映した新しいAI解析の可能性を示した。

本システムは、既に撮影されたX線画像を活用して骨粗鬆症リスクを評価する「opportunistic assessment(ついで評価)」を可能にする。日常診療や健診で撮影される画像から骨粗鬆症リスクを評価できるため、未診断患者の早期発見や適切な診断・治療への導入が期待される。本研究は、AIを活用した骨粗鬆症診断補助技術の有用性を示すとともに、単純X線画像から骨粗鬆症リスクを評価する新たなアプローチを提案するものである。


AI骨粗鬆症診断補助システムの概要

著者コメント

本論文で報告したシステムは、5年以上前に開発した初期モデルであり、東京大学医学部附属病院のデータセットを用いて構築したAIモデルについて、一般住民コホートであるROAD studyのデータを用いてその有用性を検証したものです。その後もAI技術は大きく進歩しており、私たちも継続的な研究開発を行った結果、現在では解析精度は大幅に向上しています。現在は胸部、腹部、脊椎、関節など様々なX線画像を活用した骨密度推定技術の開発を進めるとともに、国内外で取得した特許技術を基盤として実用化に向けた取り組みを進めています。AIを活用して潜在的な骨粗鬆症患者を早期に発見し、骨粗鬆症医療を「待つ医療」から「見つける医療」へ変革する新たなパラダイムの創出を目指しています。

茂呂 徹(東京大学大学院医学系研究科 関節機能再建学講座)

2026年6月30日