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筋修復マクロファージ由来activin Aが異所性骨化を誘導する

Activin A secretion by muscle-repairing macrophages induces heterotopic ossification in mice
著者: Wenqiang Yin, Kazuo Okamoto, Asuka Terashima, Warunee Pluemsakunthai, Takehito Ono, Taku Ito-Kureha, Shizuo Akira, Yoshinobu Hashizume, Roland Baron, Satoshi Ueha, Kouji Matsushima, Martin M. Matzuk, Yuji Mishina, Hiroshi Takayanagi
雑誌: Journal of Clinical Investigation. 2026年3月2日. 136(5): e193797. doi: 10.1172/JCI193797
  • マクロファージ
  • Activin A
  • 異所性骨化


左)筆者。右)高柳広先生


左)岡本一男先生 右)筆者。

論文サマリー

マクロファージは感染防御に関わる免疫細胞として知られているが、近年では組織修復、線維化、腫瘍形成など、多様な生命現象や病態にも深く関与することが明らかになっている。骨格筋損傷後の再生過程においてもマクロファージは必須であるが、どのマクロファージ集団が、どのような分子機構を介して筋再生を支えているのかは十分に解明されていなかった。

本研究では、ヒト外傷性筋損傷を模したマウスモデルを用い、損傷部位に集積する単球由来マクロファージを解析した。その結果、筋損傷後早期に出現するLy6ChiCX3CR1loPDPN+CD9+マクロファージ集団を同定し、この細胞集団をMrep(macrophage directing tissue repair)と名付けた(図1A)。更に、Mrepはactivin Aを高発現していることがわかった(図1B)。Activin Aは、筋衛星細胞由来の筋芽細胞の増殖を促進し、筋再生を支えていた。実際に、マクロファージを除去したマウスでは筋再生が障害されたが、Mrepの移入により筋再生は改善した。また、マクロファージ特異的activin A欠損マウス(LysM-Cre Inhbafl/fl)では筋再生が低下し、Mrep由来activin Aの重要性が示された(図2A、B)。


図1:損傷した筋肉におけるscRNA-seq。(A)UMAPによるクラスターの可視化。単球由来マクロファージは3つのサブクラスターに分かれた。(B)各クラスターにおけるactivin Aの発現。

次に、Mrepがactivin Aを産生する仕組みを解析したところ、筋損傷により生じるDAMPsがTLR4を活性化し、TRIF、TBK1、IRF3/7を介してactivin A発現を誘導することが明らかとなった。すなわち、Mrepは損傷環境を感知し、activin Aを分泌することで筋再生を促す修復型マクロファージである。

一方で、この修復機構は病的条件下では異なる結果をもたらした。進行性骨化性線維異形成症(FOP)を模したACVR1変異マウスでは、筋損傷を契機として損傷部位に異所性骨化が誘導された(図2C)。しかし、マクロファージ特異的Activin A欠損マウスでは異所性骨化が抑制された(図2C)。さらに、Mrepのactivin A産生がTLR4依存的であることからTLR4阻害剤TAK-242を投与したところ、activin A発現が低下し、異所性骨化も抑制された。以上より、本研究は、Mrepが生理的には筋再生を促進する一方、ACVR1異常下では異所性骨化を引き起こす「両刃の剣」として機能することを示した。Mrepおよびそのactivin A産生経路は、筋再生促進とFOP治療の双方に関わる新たな標的となる可能性がある。


図2:筋肉再生及び異所性骨の評価。(A)損傷した下肢筋群のマクロ画像。マクロファージ特異的activin A欠損マウスでは、筋肉サイズの縮小が見られた。(B)損傷した下肢筋群の組織免疫染色画像。マクロファージ特異的activin A欠損マウスでは、再生中の筋線維の密度及び断面積の低下が認められた。(C)筋損傷後28日目、マウス下肢のマイクロCT画像。ヒトFOPを模倣したACVR1変異マウスにおいて、損傷した部位(下肢の筋群)に異所性骨(白矢印)が生じた。マクロファージ特異的activin Aを欠損させると、異所性骨の形成が顕著に抑制された。

著者コメント

本研究は、私自身が長年取り組んできたプロジェクトであり、今回ようやく一つの研究成果として皆様にご報告できることを大変うれしく思っています。当初は、FOPにおいてactivin Aを産生するマクロファージが異所性骨化を誘導する、という病的側面を中心に研究をまとめることも考えていました。しかし、高柳先生から「このマクロファージは生理的にはどのように働いているのか」という問いをいただき、その細胞の本来の役割を改めて追究することになりました。筋損傷モデルで解析を重ねた結果、このマクロファージ集団は単に疾患を悪化させる細胞ではなく、通常はactivin Aを介して筋再生を支える修復性マクロファージであることが分かりました。一方で、ACVR1変異という条件下では、同じactivin A産生機構が異所性骨化を引き起こすことも明らかになりました。生理的な組織修復と病的な骨形成が、同じ免疫細胞を介して紙一重でつながっていることを実感できた点が、本研究で最も印象に残っています。本研究を進めるにあたり、日々ご指導いただいた高柳広先生、岡本一男先生、三品裕司先生をはじめ、共同研究者の先生方、研究室の皆様に心より感謝申し上げます。

尹 文強(東京大学大学院 医学系研究科)

2026年6月30日