The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

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PDK1依存的代謝リプログラミングによる骨肉腫幹細胞の幹細胞性と腫瘍形成能の制御機構

PDK1-dependent metabolic reprogramming regulates stemness and tumorigenicity of osteosarcoma stem cells through ATF3
著者: Kazuya Tokumura, Kazuya Fukasawa, Jiro Ichikawa, Koki Sadamori, Manami Hiraiwa, Eiichi Hinoi
雑誌: Cell death & disease, 2025 Jul 29;16(1):574. doi: 10.1038/s41419-025-07903-7.
  • 骨肉腫幹細胞
  • PDK1
  • 代謝リプログラミング

論文サマリー

本研究では、骨肉腫における腫瘍悪性化の鍵を担う骨肉腫幹細胞(OSCs)の代謝特性とその分子機構について解析した。がん細胞は一般にWarburg効果により解糖系を優先するが、がん幹細胞は腫瘍種や微小環境に応じて多様な代謝特性を示す。本研究では臨床検体のsingle-cell RNA-seq解析により、OSCsにおいて解糖系および酸化的リン酸化(oxidative phosphorylation, OXPHOS)の両方が活性化していることを明らかにした。

特に、解糖系とOXPHOSのバランスを制御する酵素であるPDK1がOSCsで高発現し、骨肉腫患者の予後不良と相関することを見出した。PDK1をRNA干渉により抑制すると、幹細胞性(スフェア形成能や自己複製能)、解糖活性、腫瘍形成能が低下した。また、PDK1阻害剤である2,2-dichloroacetophenone(DAP)を用いた薬理学的阻害においても腫瘍増殖および肺転移が抑制され、PDK1が治療標的となり得ることが示された。

次に、RNA-seq解析によりPDK1下流因子として転写因子ATF3を同定した。ATF3はOSCsで高発現し、PDK1発現と正の相関を示した。ATF3の過剰発現はPDK1欠損による幹細胞性低下を回復させたが、代謝には影響を及ぼさなかった。この作用はTGF-β/Smadシグナル経路の活性化を介していると考えられた。

加えて、野生型PDK1はATF3発現と幹細胞性を増強した一方、キナーゼ活性欠損変異体では効果は認められなかった。また、解糖系阻害によりATF3発現上昇が抑制されたことから、PDK1による代謝変化がATF3制御に関与することが示唆された。

以上より、PDK1は代謝リプログラミングを介してOSCsの幹細胞性および腫瘍形成能を制御し、その一部はATF3/TGF-β/Smad経路を介することが明らかとなった。本研究は骨肉腫に対する新たな治療標的としてPDK1を提示するものである(Graphical abstract)。

著者コメント

骨肉腫はがん領域の中でも依然としてアンメットメディカルニーズが高く、少しでも治療選択肢を増やし、患者さんの予後改善に貢献したいという思いから本研究に取り組みました。本研究では、薬剤耐性や再発の一因と考えられるがん幹細胞に着目し、その分子基盤の解明を試みました。臨床検体由来の多様なトランスクリプトームデータに加え、ノックダウン骨肉腫細胞株のRNA-seq解析を組み合わせることで、代謝制御機構を多角的に検討しました。本研究の成果が骨肉腫治療の新たな戦略につながることを期待しています。最後に、本研究にご協力いただいた多くの皆様に心より感謝申し上げます。

徳村 和也(岐阜大学 大学院連合創薬医療情報研究科)

2026年6月30日