The Japanese Society for Bone and Mineral Reserch

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Dnmt1は成長板軟骨細胞のエネルギー代謝制御を介し骨長を決定する

Dnmt1 determines bone length by regulating energy metabolism of growth plate chondrocytes
著者: Yuta Yanagihara, Masatomo Takahashi, Yoshihiro Izumi, Tomofumi Kinoshita, Masaki Takao, Takeshi Bamba and Yuuki Imai
雑誌: Nat Commun. 2025 Nov 4;16(1):9492. doi: 10.1038/s41467-025-65145-9.
  • 骨格形成
  • 軟骨内骨化
  • エピジェネティクス制御


今井研究室メンバーの集合写真(2026年4月, 学内の桜の前にて)。 柳原 裕太 [筆頭著者, 助教](左から3番目)、今井 祐記 [最終著者, 教授](左から6番目)

論文サマリー

DNAメチル化維持機構は、エピジェネティック制御の基盤となる重要なシステムである。我々は、Musculoskeletal Knowledge Portal(MSK-KP)を用いた解析により、DNA維持メチル基転移酵素であるDNMT1の多型が、骨・筋関連形質の中で「身長」と最も有意な相関を示すことを見出した。しかし、軟骨細胞においてDNMT1がどのように骨格形成を制御し、身長に寄与しているのかは不明であった。そこで、Prx1-Cre マウスを用いて四肢間葉系細胞特異的 Dnmt1欠損(cKO)マウスを作出し、四肢の伸長に関与する成長板軟骨細胞におけるDnmt1の機能を解析した。cKOマウスでは、対照(Ctrl)マウスと比較して長管骨の骨長が1週齢の時点で約60%にまで顕著に短縮していた。さらに6週齢においても、cKOマウスの骨長はCtrlマウスの半分にも満たず、非常に重篤な表現型を示した。また、この期間を通じて、cKOマウスでは成長に伴う長管骨の伸長がほとんど認められなかった(図1)。

骨の成長には成長板に存在する軟骨細胞が深く関与していることから、成長板軟骨の組織学的解析を行った。その結果、cKOマウスでは増殖軟骨層の菲薄化、肥大軟骨層の拡大、および石灰化の促進が認められた。さらに、初代培養軟骨細胞を用いた増殖・分化解析においても、細胞増殖能の低下と石灰化の亢進が認められた。これらの結果から、Dnmt1欠損により、軟骨細胞の増殖能が低下し、分化・成熟が促進されることが示唆された。

次に、Dnmt1によって発現が制御され、軟骨細胞分化に影響を及ぼす遺伝子を同定するため、RNA-seqとMBD-seqの統合解析を行った。具体的には、Dnmt1欠損に伴ってDNAメチル化が低下し、同時に発現が上昇する遺伝子を抽出した。その結果、DNAメチル化の低下に伴って発現が上昇した遺伝子の多くが、細胞内エネルギー代謝に関連していることが明らかとなった。実際に、メタボローム解析を行ったところ、cKO軟骨細胞では、TCAサイクルおよび解糖系に関わる多くの代謝産物がCtrl軟骨細胞と比較して高値を示した。また、DNMT1の発現を抑制したヒト関節軟骨細胞においても、同様にエネルギー代謝の亢進が認められた。

以上の結果から、Dnmt1によるDNAメチル化の適切な維持は、遺伝子発現制御と代謝産物供給の両面から細胞内エネルギー代謝を調節し、軟骨細胞の分化・成熟を制御していることが明らかとなった。すなわち本研究では、DNAメチル化維持機構が、軟骨細胞内エネルギー代謝の調節を介して成長板軟骨の分化・石灰化を制御し、正常な骨格形成に寄与することを示した(図2)。

著者コメント

本研究は、1st authorである柳原が学位取得後から本格的に着手した研究です。研究開始から論文発表に至るまで約5年を要し、そのうちリバイズにも1年以上をかけて取り組んだ結果、Nature Communicationsへ掲載することができ、大変思い入れの深い研究となりました。

エピジェネティックな遺伝子発現制御機構が骨・軟骨に及ぼす影響は、成長期の骨格形成だけでなく、加齢や疾患感受性にも関与している可能性があります。今後は、本研究で得られた知見を基盤として、骨・軟骨関連疾患におけるエピジェネティック制御の役割をさらに明らかにし、疾患発症機序の解明、さらには新たな治療法の開発へと展開していきたいと考えております。

本研究にご協力いただきました共同研究者の先生方、実験・解析にご協力いただいた皆様に、心より感謝申し上げます。

柳原 裕太(愛媛大学プロテオサイエンスセンター病態生理解析部門)

2026年6月30日